「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第992回
ラブホテル街から脱皮かな?(その1)

自分で語るのもなんだが、
フードにはひとかたならぬ興味を示すのに
フーゾクのほうはからっきしである。
これでも若い頃にゃ、エンコ(浅草)辺りじゃ、
ちったあ、名の知れたお兄ィさんだったが・・・。
フフッ、もちろん冗談ですって――。

それでも大東京のどこにラブホ街があるかぐらいは
ちゃあんと心得ているつもりだ。
新宿・渋谷・池袋の三大メガタウンの裏スジに
必ずあるのは当たり前田のクラッカー。
あとはやっぱり鶯谷と湯島でしょうな。
おそれおおくも上野恩賜公園を北と南から
挟み込むようにして2つのラブホ街が林立している。

鶯谷は山手線の内側に足を向けてしまうと
お墓や学校ばかりで面白くも何ともない。
外側だってラブホに用のない向きには
無用の長物でしかないのだ。
数軒の赤提灯と焼肉の「鶯谷園」くらいしかない。

その点、湯島は趣きを異にしている。
繁華街としてのスケールが鶯谷よりはるかに大きく、
遊ぶ場所がたくさんあるから
そのぶんラブホの数が制限されて
上手くバランスが取れているわけだ。

湯島天神から湯島聖堂に抜けてゆく暗い道には
多くのラブホテルが残っていて“無用の介”にはうら寂しい。
反対側の天神下と上野広小路を結ぶ春日通りはにぎやかだし、
一本東を平行して走る上野仲通りは
界隈随一の風俗ゾーンとなっている。

銀座でいえば4丁目の交差点(旧尾張町)に当たるのが
湯島天神下の交差点だが、ここに行列の絶えることが
ほとんどないラーメン店「大喜」がある。
その向かいには馬喰町の人気店「ぽっぽっ屋」が
進出して来て支店を構えている。
何やらラブホ街・湯島がラーメンの街へと、
脱皮しつつあるように見えぬこともない。

半年前、同じ天神下にオープンしたのが「麺屋げんぞう」。
たった6席の小さな店で間口も遠慮がちに狭く、
ちょっと見は小粋な若女将が細腕で切盛りする小料理屋風。
“らーめん”と“塩”が刷り込まれた白提灯がなければ、
それこそ誰も中華そば屋とは気づくまい。

塩らーめんと四川風担々麺の二本柱が店を支えており、
夜だけここに味噌らーめんが加わる。
ラーメンの基本ともいえる“醤油”をあえて避けて通るのは
自慢の“塩”に誘導しようとする強い意思が働くからだろう。
よほど腕に覚えがあるとみた。

誘導にまんまとハマッて塩らーめん。
白い器に木製のお玉を添えて自慢の一品が目の前に置かれた。
“重箱の隅ツツキ”で恐縮ながら
スープ麺やつゆそばにお玉はイヤである。
願わくば、チリ蓮華にしてほしい。
お玉はスープをどんぶりから口元に運ぶ道具ではなく、
鍋から器によそうためのものであろう。

まあ、いいや。
器を彩るのはチャーシュー・シナチク・わかめ・貝割れ。
文句ばかりを重ねてわずらわしいと思われようが
ラーメンにわかめと貝割れはイヤである。
願わくば、海苔とほうれん草にしてほしい。

まあ、いいや。
パキッと割った割り箸でチャーシューの真下をまさぐった。

              =つづく=

 
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2010年4月23日(金)

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