「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第993回
ラブホテル街から脱皮かな?(その2)

昨年10月、湯島は天神下の交差点に
オープンしたばかりの「麺屋げんぞう」。
早くも地元だけでなく、遠来の客が行列を作り始めている。
キャパがたったの6席では、さもありなん。

割り箸の先っちょで麺をつまみ上げたところだ。
本来はスープを一口、味見するところながら
蓮華の代わりの木製お玉は使う気になれない。
かと言って、いきなりどんぶりを抱えての
“黒田節”もないもんだ。
千秋楽の優勝力士じゃあるまいし・・・。

麺は細打ちややちぢれの多加水麺。
フラットな平打ちはパスタのリングイネを思わせる。
シコシコというほどではなくともコシはそれなりに備えており、
歯応え、舌ざわりともにけっこう。
ただし、スープは感心しない。
塩のトンガリが気になるのだ。
干し貝柱・干し海老の控え目な滋味は感じられても
自慢の羅臼の塩が舌の上で落ち着かない。

和食でもフレンチでも、そもそも料理人が
自分で使用する塩の自慢を始めると、
それを強調するあまりに必ず使い過ぎの傾向が出てくる。
つくづく塩ラーメンは難しい。

湯島は起伏のある土地柄である。
高台の湯島天神から御茶ノ水に向けてラブホ街を真南に下り、
清水坂に到達した場所にあるのが「大至」。
有名店「大喜」を意識したものか、あるいは模倣したものか、
定かではないにせよ、似通った屋号ではある。

カウンターが2つ並んでいて
分煙制がキチンとしているここのラーメンは大好きだ。
麺は細くも太くもない、ほぼ真っ直ぐのツルシコ。
醤油スープはちょっとしょっぱ目ながら、よい風味。
王道の支那そば系と言ってよい。

特筆に値するのは厚切りもも肉チャーシューで
赤身部分はもちろんんこと、
端っこの脂身がとてもよろしい。
低温のラードでじっくりと煮られた逸品である。
“豆殻で豆を炊く”というのは中国のことわざ、
こちらは“豚脂で豚を煮て”いるわけだ。
仏料理でいうところのコンフィですな。

初訪問から2ヶ月ほどして再訪。
「大至」のチャーシューは好きなのだが
どこの店でもチャーシューメンは好まないので
この日はアサヒスタイニーで炙りチャーシューを楽しむ。

白髪ねぎに甘辛のタレ
photo by J.C.Okazawa

前回同様に豚肉の旨さは健在なれど、
何切れもあっては有り難味が薄れる。
やはりどんぶりの中で1枚だけが
浮きつ沈みつしている景色がよい。

仕上げは味噌や塩に浮気をせず、醤油味でいく。
ただしワンタンメンにしてみた。

チャーミングなルックスにため息
photo by J.C.Okazawa

どんぶりの雷紋模様もノスタルジックだ。
ワンタンメンにはチャーシューが入らない。
代わりにワンタンには肉餡がいっぱい。

当世、湯島の名物はラブホテルのみに非じ。
かつては恵比寿や荻窪が東京のラーメンタウンと呼ばれたが
湯島もラーメン街へと、スマートな脱皮を果たしてほしい。
それでは困るカップルさん、ごめんね、ごめんね〜!


【本日の店舗紹介】その1
「麺屋げんぞう」
 東京都文京区湯島3-35-3
 TEL非公開

【本日の店舗紹介】その2
「大至(だいし)」
 東京都文京区湯島2-1-2
 03-3813-1080

 
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2010年4月26日(月)

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