第997回
漢・韓 折衷料理店(その2)
礫(こいし)川公園隣りの珍妙な中華料理店、
「味菜里」にくつろいでいる。
時刻は18時すぎでまだ早いせいか、
われわれのほかに客はいない。
店のオバさんは中華料理店を主張してゆずらないが
中華屋にチヂミやマッコリはないのが普通だろう。
壁の品書きになぜか、もつ煮込みがあった。
何度も書いているから読者におかれては
“目にマメ”の出来ている方もおられようが
雑誌に煮込みの連載を綴っている身としては
看過するとあとに悔いを残すことになる。
最初にビールと煮込みと前回当たりだった餃子を注文。
あとはじっくりとメニューを吟味する。
 |
中華屋らしくスープ碗に蓮華を添えた煮込み
photo by J.C.Okazawa
|
つき合ってくれたツレの要望も受け入れねばならない。
リクエストが麻婆豆腐と聞いて絶句。
「いい趣味してるぜ!」とガッカリしながらも頼んでやった。
何だって日本人は麻婆豆腐がこんなに好きなのかねェ。
「陳麻家」なんて東京中にはびこっているものなァ。
不愉快なことに麻婆に目のない味音痴、
友里征耶のすっとぼけた顔が一瞬、目に浮かんでは消えた。
 |
ちょいと緩めで友里なら文句が出そうだ
photo by J.C.Okazawa
|
麻婆は相方にオッツケておき、餃子でビールを飲み終えた。
1月前は紹興酒を飲んだ。今回はマッコリにする。
コリアンどぶろくのマッコリは
中華料理にも合いそうな気がしたからだ。
料理をもう1品選ばせてみたら
カシューナッツとセロリの炒めがご所望とのこと。
やっぱり訊かなきゃよかった。
またずいぶんと、つまらんものを食べたがるものだ。
ピーナッツを始め、中華の炒めものにナッツ類が
入っている料理はどうも性に合わない。
締めには餃子同様、前回食べてよかった焼きそばを。
その節は五目だったので今回は海老焼きそばにした。
 |
具もさることながら半分焦げた麺がよい
photo by J.C.Okazawa
|
弾力に富む中華麺の食感は特筆に値する。
まだちょいと飲み足りない。
「味菜里」への途中、通りかかった和食店を思い出した。
こんにゃくゑんまとして知られる源覚寺の方向に戻って
「ニューいけ増」の暖簾をくぐった。
店名から察するに、日本橋・神田・赤羽と都内に3店舗ある
「いけ増」で修業した料理人が開いたのかもしれない。
あるいは先代の時分から「いけ増」を名乗っていたところ、
代替わりして“ニュー”をかぶせたとかネ。
お腹はいっぱいだから軽くつまんで
足りないアルコールを注入したいだけ。
カウンターの端っこで小ぶりの毛蟹が1匹、
こちらに顔を向けている。
「アチシに食べてほしいのかえ?」
目で訊ねると
「そうでありんす」
ちゃんと応えるではないか。
“蟹太夫”との間で取り交わされた目と目の会話。
隣りの“麻婆野郎”も大賛成したものだから
オトコJ.C.、清水の舞台から「エイヤ!」と飛び降りた。
小さいながらも蟹ミソがミッシリと
なかなかの蟹サンではありました。
ほかに料理は頼まずにあとはビールの中瓶1本と燗酒1合。
気になるお勘定はと言えば、6080円であった。
予想よりも2〜3千円ほど安く、ちょっとトクした気分なり。
【本日の店舗紹介】その1
「味菜里」
東京都文京区春日1-15-9
03-3815-9320
【本日の店舗紹介】その2
「ニューいけ増」
東京都文京区小石川1-8-1
03-3811-9861 |