「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第1006回
松田優作を偲んで

松田優作の遺作「ブラックレイン」を観たのは
公開まもない1989年9月のニューヨーク。
狂気のヒール役はアメリカ人の同僚たちにも
強い印象を残して評判になったものだ。
当時、人気絶頂のマイケル・ダグラス、
売り出し中のアンディ・ガルシア、
日本の高倉健や若山富三郎の間で際立つ存在感を示し、
今後の活躍が大いに期待されただけに夭折は残念無念。
今生きていたらどんな俳優になっていたことだろう。

めったに来ない下北沢に珍しく所用あり。
ここは歩きづらいから散歩好きにとってはイヤな町。
似たタイプの自由が丘とともに行きたくない町の双璧だ。
下北・自由が丘に限らず、
歩行者にやさしくない町はみな嫌いで
新宿・渋谷・原宿あたりは極力避けたい。

人であふれ返る渋谷なんぞ、
歩道よりも車道を歩くほうが多いくらいだから
J.C.事故死の訃報(人によっては朗報)が届いたら
現場は渋谷だと思っていただきたい。
その点、銀座と浅草は文句なし。
願わくば、このどちらかで死にたい。

下北に行くと決まったので
久しぶりに「LADY JANE」で飲むつもりになった。
松田優作がときどき姿を見せた伝説のジャズバーである。
最後に訪れたのが2002年の7月。
店内の面影もほとんど記憶にないほどだ。

バーに直行するわけにもいかず、まずは腹ごしらえ。
やはり想い出深い店、「来々軒」に行くことにした。
1945年いうから敗戦の年の創業である。

ここを見つけたときは無性にうれしかった
photo by J.C.Okazawa

しっかし、この店に落書きするバカがいるんだから
下北沢という町のレベルの低さが判る。

シューマイは相変わらず上デキ。
ところが八宝菜は使用した油が
いかんせん苦手なタイプでこれには往生した。

見た目はおいしそうなんだけど・・・
photo by J.C.Okazawa

2打席連続ヒットというヤツはなかなか難しい。

目当ての「LADY JANE」は健在であった。
女性バーテンダーが2人いて
客も単身の男性が1人ずつの計2人。
おもむろに店内を見回すと
忘れかけていた記憶が次第によみがえってくる。
別段、特徴があるわけでもないのに
松田優作がここで飲んでいたと思うと、
何となく雰囲気が生まれてくるのだ。
これが付加価値というものだろう。

1杯目は「LADY JANE」に敬意を表してホワイトレディ。
ジンとコアントローで作るカクテルの定番だ。
フレッシュレモンの酸味が
中華の油で疲弊した舌をキリッと引き締める。

思えば「人間の証明」・「蘇る金狼」・「野獣死すべし」・
「家族ゲーム」・「探偵物語」、ずいぶん観たもんだ。
好きなのは「探偵物語」かな。

ジンをラムに替えただけであとは同じレシピのXYZが2杯目。
ところで優作はいったい何を飲んでいたのだろう。
映画版とはまったく別のTV版「探偵物語」では
ドライシェリーのティオペペを愛飲する役柄だった。
でもまさかここでシェリーでもあるまい。
店の女性に訊ねれば即答してくれたかもしれないが
ここで松田優作の名前を出すのは気恥ずかしい。
こだわりはあまりないらしいから
スタンダードなスコッチの水割りあたりだろうか。


【本日の店舗紹介】その1
「来々軒」
 東京都世田谷区北沢3-26-3
 03-3468-0247


【本日の店舗紹介】その2
「LADY JANE」
 東京都世田谷区代沢5-31-14
 03-3412-3947

 
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2010年5月13日(木)

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