「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第1009
リトルコリア・三河島(その2)

新大久保と並ぶ都内屈指のコリアンタウン・三河島に来ている。
それもあまり好きではない焼肉を食べるために――。

焼肉自体はけして嫌いではないのだが
衣服や髪の毛にまとわりつく匂いがイヤなのだ。
無煙ロースターだとしても、やはり気になってしまう。
ニューヨークやパリでコリアン焼肉が
ずっと日の目を見ないのはこのせいだろう。
欧米人に比べ、キレイ好きで風呂好きの日本人が
臭気にはきわめて鈍感なのが不思議で仕方がない。

この日は八柱での墓参と松戸旧市街の散策で
一汗も二汗もかいたし、多少の砂ほこりもかぶってきた。
よって絶好の“焼肉日和”なのである。
どうせ帰宅後にシャワーを浴びる身だからだ。
J.C.は数十年前から生粋の“朝シャン派”。
毛髪の発育を妨げる頭皮の脂は就寝中にかなり分泌されるから
効率よく取り除くには朝の洗髪が欠かせない。
おかげでこの歳になっても髪の毛には不自由することはない。

地元のコリアン・レディに教えてもらった「九里味」は
時間が早いせいか、速やかに席にありつけた。
ビールは生も瓶もキリンだけ。大瓶を注文する。
メニューには見慣れない“モノ”が2品あった。
チャリとカオリの刺身である。
チャリって何だ? まさか自転車の活造りじゃあるまい。
カオリって何だ? まさか香りの強いサカナじゃあるまい。

まもなく店は突然、立て込んできて
接客のオバさんは孤軍奮闘、てんやわんやとなった。
とても呼び止めて悠長に質問できる状況ではない。
ビールと一緒に突き出し代わりの白菜キムチが運ばれたので
きゅうりのオイキムチを注文。
レバ刺しはだいぶ陽気が暖かくなってきたので発売停止中だ。

焼肉はカルビとロースが1人前ずつにハラミは2人前。
850〜960円でお手ごろ価格がありがたい。
突出しているのはタン(1350円)と
上カルビ(1600円)くらい。

カルビとロース
photo by J.C.Okazawa


ハラミ2人前
photo by J.C.Okazawa

さすがに地元の人気店、肉質は文句ナシであった。
味付けもそんなに化調を感じさせず、
パクパクいけてビールがすすむこと、すすむこと。

メニューにヤンという珍しい部位があった。

海鼠(なまこ)のようなルックスのヤン
photo by J.C.Okazawa

牛の第三胃(センマイ)と第四胃(ギアラ)をつなぐ器官で
めったにお目に掛かれない珍品である。
あまり美味とはいえないが“歯応え楽しみ派”には喜ばれよう。
ついでにホルモンも追加した。

小腸のホルモン
photo by J.C.Okazawa


そろそろ食べごろのヤンとホルモン
photo by J.C.Okazawa


なかなかの佳店ながら、もうちょっと接客係を増やしてほしい。
追加注文がスムースにいかず、客にストレスが溜まってしまう。
とうとうチャリとカオリが何であるか
訊きそびれてしまい、帰宅後に調べてみると
驚くべきことにスズメダイとアカエイであった。
スズメダイは初耳だが、彼の国ではエイを盛んに食べるのだ。

朝鮮語でエイの刺身はカオリ・フェという。
エイを発酵させるとホンオ・フェとなり、
スウェーデンのシュールストレミングとともに
世界の2大悪臭食物の一翼を担うことになる。
その臭さたるや、伊豆諸島のクサヤの比ではないという。


【本日の店舗紹介】
「九里味」
 東京都荒川区荒川3丁目27-3
 03-3806-6187

 
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2010年5月18日(火)

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