「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第1010回
鶏胸肉のパイラルド
=男の手抜き料理シリーズ第15回=

「所変われば品変わる」とはよく言ったもので
その好例は枚挙にいとまがない。
今回の「手抜きシリーズ」で取り上げる鶏胸肉もその1つ。
東京では鶏の胸肉よりも、もも肉のほうが高い。
火を通しすぎるとパサつく胸肉が嫌われるためだ。
浅草橋のとある焼き鳥屋など、
大量に余った胸肉を翌日のランチのチキンカレーに
どっさり入れてくるが、旨みがまったくなく、
肉汁は皆無の上、食感まで悪いから
どうにもならないカレーライスになってしまっている。

所を変えてアメリカに行くと、胸とももの立場が逆転。
胸肉はホワイトミートとして好まれ、
ももはダークミートと呼ばれて人気がない。
実に面白い現象といえよう。

そもそも日本人は胸肉に火を入れすぎる。
今回は鶏胸肉のおいしい食べ方を紹介したい。
パイラルドなる聞きなれない言葉はイタリア語。
イタリア本国よりもニューヨークのリストランテで
よりポピュラーな料理である。
仏料理店でも供されて、仏語ではパイラール。
ちなみに英語はパイラードと発音する。
冒頭の「所変われば品変わる」に再び登場願うが
東京のレストランのメニューに
この料理を見とめたことはただの一度もない。
ミルクだけで育った仔牛肉が最上等ながら
鶏の胸肉もどうしてどうして、劣らずの美味である。

麻布十番の名店「クッチーナ・ヒラタ」。
都内でも数少ない本物の仔牛肉を食べさせる店だ。
個性的なマダムのファンは多いが、アンチも少なくない。
かく言うJ.C.は、この人に一目も二目も置いている。

もう何年も前の話だが、その夜、
いつものように仔牛の有無を確かめると
「もちろん、ございます」のご返答。
ふと好奇心がアタマをもたげて
「パイラルド、できますかね?」――訊ねてみた。
並みの料理店なら
「エッ? パイラルドですか? 
それは何でございましょう?」となるのが
お定まりのケースであろう。
ところが、この人は違った。
「はい、お作りしますよ」
心の中で大きな拍手を送るJ.C.でした。
こういう真のプロフェッショナルは大好きなのであります。

それでは、アラ・キュイジーヌ!

(1)用意するのは、鶏胸肉・・・130g前後のものを2枚
   おろしニンニク・・・少々 ローズマリー・・・適宜
   オリーヴ油・・・少量 レモン・・・1/2個

(2)胸肉を肉たたきかワインの空瓶で薄くたたき伸ばし、
   両面に軽く塩・胡椒した上で、ニンニクをすり込む 
   肉の厚さは5ミリ程度が好ましい

(3)サカナの開きの要領で、胸肉をオーヴンで焼く
   片面を焼く時間は1分なら短いが2分では長かろう  

(4)ひっくり返してその上にローズマリーを散らし、
   オリーヴ油少々を振りかけ、今度は1分間焼く 

(5)好みでレモンを搾っていただく 
   味がもの足りない向きは、顆粒コンソメ・
   白ワイン(日本酒でも可)・バターを
   少量ずつ合わせて煮詰めたソースをかける

こんなにシンプルなのに、しっとりジューシーに仕上がり、
鶏胸肉を見直すこと請け合い。
お年寄りやダイエット中の御仁にはもって来いの1皿である。

 
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2010年5月19日(水)

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