「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第1011
行ってみました「すしざんまい」(その1)

「つきじ喜代村」直営のすしチェーン店「すしざんまい」。
2001年に築地場外に第1号店を構えたというから
それほどの歴史を積み重ねてきたわけではない。
“寿司といえば築地、築地といえば
「すしざんまい」を定着化させた”
みずからこうのたまってはばからない。
これには正直、あきれ返った。
まるで傲岸不遜に厚顔無恥が
拍車をかけたような物言いではないか。

“不味いカレーやラーメンは食べられるが
 不味い鮨は食べられたものではない”
長いこと変わらざるJ.C.の主義主張だ。
店内や鮨種自体に生臭みを感じたらもうダメで
たとえ活きのよいサカナでも処理を誤ると
匂いが気になってしまうことがままある。

ひかりモノを酢と塩で〆たり、
貝類を甘酢にくぐらせたりするのは
江戸前シゴトの真骨頂。
種の鮮度が高くとも真っ当な鮨職人は
その一手間を惜しまない。
そうしたほうが素材の魅力が引き立つからだ。

廉価なすしチェーン店に足を運んだことは
ただの1度もないとは言わないけれど、
生涯で10回に満たないのではなかろうか。
ここ10年でも浅草の「まぐろ人」と
銀座の「美登利寿司」に各1回行っただけである。

上野広小路に「すしざんまい」が
オープンしたのはつい1年ほど前のこと。
店頭に大きな水槽を2つも設置して
中では大小入り混じったサカナがスーイスイ。
あじや真鯛や平目が揃いも揃って
己が悲劇的将来を夢想だにせず、
ただただ無邪気に泳いでいるのである。

店の並びには鈴本演芸場やTSUTAYA、
それに福神漬を考案した「酒悦」が
軒を連ねており、立地条件は申し分ない。
加えて年中無休の24時間営業ときては
売上高は相当な金額に上るはずだ。

ちょいと店内をのぞいてみると
ピーク時間外でさえ、客はそれなりの人数に達している。
繁盛振りが目に焼き付いているので
これはそこそこの鮨を食べさせるのだ、
そんな推量が生まれてくるまでになった。

水槽で泳いでいるサカナは身がやせてしまい、
旨くないという説があるにせよ、
鮮度落ちのイカレたヤツよりはマシだろう。
白身やまぐろなど、シゴトを必要としない種に限れば
職人の力量差がおもてに出ることもない。
本わさびだけはまず期待できないから
わさびとおろし板は自分で持ち込めばよい。
そこまですればチェーン店といえども
どうにか“食に耐えうる”鮨にありつけるのではないか。
そう考えた春の宵であった。

             =つづく=

 
←前回記事へ

2010年5月20日(木)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ