第1012回
行ってみました「すしざんまい」(その2)
思案をめぐらせた結果、大衆すしチェーン店、
「すしざんまい」の実力のほどを検証する気になった。
目指すは広小路に大箱を構える上野店である。
鮨好きながらあまりうるさいことを言わない、
旧知の友人を伴って週末の夕刻に赴くと、
すでに3組の先客が並んでいた。
やはり人気店なのだ。
店外に出張っているマネージャー風の男性に
禁煙のテーブル席希望の旨を告げる。
立て混む時間帯ながら喫煙席は何卓も空いていた。
店の思惑を超えて喫煙者が減少しているのかもしれない。
普段、テーブル席に座ることはないのに
あえてお願いしたのは理由がある。
本わさびと鮫皮のおろし板を持ち込んでいるからだ。
つけ台に居座られて目の前でゴリゴリやられたら
職人さんだっていい気持ちはしないだろうからね。
つまみの欄に好物のたこの吸盤を見つけたが
あえなく売切れ御免の憂き目。
吸盤とは似ても似つかぬ金目鯛のカブト煮を注文。
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白い眼球がこぼれ落ちた金目のカブト
photo by J.C.Okazawa
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濃い目の甘辛い味付けにビールの旨さに弾みがつく。
真鯛のカブトもよいが、金目も負けず劣らずだ。
よほどの鮮度落ちでもない限り、
これはどこで食べてもハズレることのない料理。
2人で注文したにぎり鮨はかくの如し。
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最初に頼んだのは14カン
photo by J.C.Okazawa
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1列目左から順に
真鯛・平目えんがわ・さば・ぼたん海老・
平目2カン・いか・縞あじ2カン・
小肌2カン・さんま・あじ・穴子
もちろんすべてサビ抜きで、まぐろの類いは皆無だ。
けっして美しいにぎりではないが
かといって醜いわけでもない。
「京樽」や「茶月」や「ちよだ鮨」とか、
持帰り専門店のそれよりは“種”に存在感があるし、
心なしか輝いているようにも見える。
さて、自分でおろしたわさびをはさんで食べてみました。
第一印象は酢めしがいたって凡庸。
お年寄りからお子チャマまで
万人が苦もなく許容できる最大公約数狙いなのだろう。
ウルサ型には、めし粒の立ち方、酢と塩の利かせ方、
砂糖の配合、すべてにもの足りなさが感じられる。
肝心の鮨種はどうだろう。
まぁまぁの及第点を上げられるのは真鯛・平目・縞あじの3点。
予想した通り、養殖といえども鮮度の高い白身に
おろし立ての生わさびが寄り添えば、
このクラスの鮨店でも何とか誤魔化せることが立証された。
せっかくこういうところに来たのだからと
日本では注文したことのないカリフォルニアロールを追加。
アボカド・トビッ子・レタス・マヨネーズが具材だ。
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米国のものとは見た目が異なる加州ロール
photo by J.C.Okazawa
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ニューヨーク赴任時代にも
ほんの数回しか口にしていない巻モノを食べるのは
おそらく15年ぶり。
20世紀も遠くなりにけりである。
【本日の店舗紹介】
「すしざんまい 上野店」
東京都台東区上野2-7-12
03-5807-6543 |