「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第1019回
ベルリンの青い空(その1)
=れすとらん しったかぶり=
あのころのニューヨークシリーズ(6)

1987年から97年までのニューヨーク時代。
年に数回は出張で東京に帰っていたから
休暇のほうはもっぱらヨーロッパへ出掛けた。
1990年代には読売アメリカ金曜版にレストランガイド、
「れすとらん しったかぶり」を毎週連載していた。
今回はそのときの欧州旅行の一コマをお届けする。

ブダペスト(ハンガリー)・ブラチスラヴァ(スロヴァキア)・
ウイーン(オーストリア)・プラハ(チェコ)と周り、
最終的に統一後まもないドイツの首都・ベルリンに到着。
これは旧共産圏、東欧諸国めぐりの旅でもあった。

早朝プラハを発った列車は昼過ぎにベルリンに着いた。
思いがけない明るい陽射しに
ふと見上げた空が抜けるように青い。
5月の空には鯉のぼりが映えるわけだ。
そしてこの季節、ドイツでは
シュパルゲル(ホワイトアスパラ)が盛んに出回る。

「Terrassen Am Zoo」はベルリン動物園の駅前2階にあって
辺りの景観は京成上野駅界隈にそっくり。
まずはシュパルゲルのゆで立てを
オランデーズ・ソースでいただく。
太い身肉の繊維に沿って縦にナイフを入れてやる。
横に繊維を切断するより、舌ざわりがなめらかなのだ。
独特の繊細な風味をじゅうぶんに楽しんだ。

続いてのプテンステーキはチキンのソテー。
胸肉をたたき伸ばして蝶々のカタチに整えてある。
若鶏のハナエ・モリ風とでも名付けたいほどだ。
ファミレスみたいな店だが、料理は本格的だった。

腹ごなしに動物園の散策。
猛獣のコレクションがウリで、トラやライオンが目の前で
肉を喰いちぎり、骨を咬みくだく姿は圧巻。
いかにもヒトラーが好みそうな光景だ。
ここで市民の注目を集めていたのがバク。
発情したオスが盛んにメスを追い回す。
メスは嫌がって逃げ惑う。
オスバクは必至だが見ていると、ユーモラスこの上ない。
結局は見物人の一人となって30分もそこにいた。
われながら情けない。

片隅にタンチョウヅルのつがいを見つけたときは心が痛んだ。
陽当たりの悪い柵の中で
いかにも冷や飯食いの日陰者といった風情。
日の丸を汚されたような思いにかられたが、
みつめるタンチョウの瞳が
「ワタシたちには静かな生活が一番、
 このままでいいんですよ、このままで」と訴える。
つがいの幸せを祈りつつ、門を出て思い出した。
オスバクは無事に本懐を遂げ得たのだろうか。

J.C.は子どもの頃より動物園好きで
海外でもかなりの数のZooを訪れている。
でも、バクの檻の前で30分も粘ったのは初めてだ。
明日は「ベルリンの青い空」のつづき。

             =つづく=


【本日の店舗紹介】
「Terrassen Am Zoo」
 9-11 Hardenberg Pl. Berlin
 315-9140

 
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2010年6月1日(火)

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