「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第1020回
ベルリンの青い空(その2)
=れすとらん しったかぶり=
あのころのニューヨークシリーズ(6)

1994年5月。
休暇で東欧諸国を独り周遊した。
この旅行はまた、オペラ三昧の旅でもあった。

ブダペストのエルケル劇場で
ヴェルディの「リゴレット」を観たのを皮切りに
念願のウイーン・シュターツオーパーでは
ベッリーニの「清教徒(イ・プリターニ)」。
このときエディータ・グルベローヴァの肉声に
初めて接したのだった。

プラハ国立歌劇場でプッチーニの「ラ・ボエーム」。
そしてベルリンのドイッチェオーパーでは
ベッリーニの「海賊(イル・ピラータ)」と
ヴェルディの「アイーダ」を連夜に渡って――。
ドイッチェオーパーでの目玉は
「海賊」のヒロイン役、ルチア・アリベルティ。
歌声も容貌もマリア・カラスの再来と謳われたソプラノである。

もう、あんな独り旅は二度とできないかもしれない。
いや、命ある限り、もう一度くらいは
機会に恵まれるかもしれないな。
すべては日ごろの“行い”次第であろう。

さて昨日のつづき
まだベルリンにいて到着後2日目を迎えている。
夜には「アイーダ」を観劇する予定で
その日の昼食に由緒あるレストランに赴いたところだ。
ベルリン最古の「ツア・レツテン・インスタンツ」は
創業が何と1621年で、あのナポレオンも訪れたという。

翌日は巨大なアイスバインに挑戦するため、
「Zur Letzten Instanz」へ。
ドイツ名物・アイスバインの本場はここベルリン。
しかもこの店は、ザウアークラウト、ゆでたじゃが芋、
グリーンピースのピュレを付け合せた正統派。
3種類のガルニのうち、どれ一つ欠けてもいけない。

地ビール・ベルリーナーのジョッキを傾けながら
“弁慶の泣き所”の向こうずねから攻めてみる。
塩気がほどよく利いていて旨い。
ひざ小僧の周りのゼラチン質も上々だ。
ただ、困ったことに
いくら頑張ってもちっとも減ってくれないのだ。
30分以上も費やし、何とか半分ほどやっつけたところで
あえなく名誉の討ち死にとなった。

アメリカ人もよく食べるが、ドイツ人だって負けてはいない。
でも、よそのテーブルではどうやら
アイアスバインに限ってはカップルでシェアしているようだ。
ということは逆に傍から見れば、
日本人はよく食べると、感心されていたのかもしれない。

明日はニューヨークに帰る身。
思えば、初めて観たオペラも
メトロポリタンオペラハウスの「アイーダ」だった。
たかだか2年ほど前のことだが
こんなにもオペラにのめり込むことになろうとは!
いまだにヴェルディの作品群が一番シックリくるのは
初恋の味は永遠に忘れられないということか。


【本日の店舗紹介】
「Zur Letzten Instanz」
 14-16 Waisen Str. Berlin
 242-5528

 
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2010年6月2日(水)

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