「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第1021回
以前を言やぁ、自殺点

「あ〜あ、やっぱりなァ!」――
テレビの前に座った人々の嘆きが
日本中にこだましたことだろう。
とどのつまり、結局は薬局であった。
同じような逆転劇を何度見せつけられたことか。

ツラツラと思い浮かべただけで
W杯フランス大会最終予選の韓国戦。
ドイツ本大会のオーストラリア戦と同じくブラジル戦。
1年前、メルボルンでのオーストラリア戦。
次から次へとまぶたに浮かんでは“消えない”。

どうせ逆転されるなら
ダメ元で1トップをセンターサークル付近に残し、
あとは9人でペナルティーエリア内外に散らばり、
全員で守るってのは1度試す価値があるんじゃないかな。
まっ、半分冗談ですけど、半分マジメです。

数少ない収穫はGKの川島とアンカーの阿部。
川島はPKの好セーヴはもとより、
ルーニーのナイスショットを止めたのは美技中の美技。
阿部はCB(闘莉王の代役)を任せると頼りないけれど、
アンカーは水を得たサカナのよう、
おかげで長谷部と遠藤が機能する原動力ともなった。

SBの長友は攻守に精力的で二重丸。
攻撃力はすでに実証済みだがFB並みの守備力が光った。
1974年西ドイツ大会を制したときの西ドイツの名FB、
フォクツを彷彿とさせるものがあったと言ったらホメすぎか。
日本にもあんな選手がいたら守備力は格段にアップする。
ただし、長友は大きなポカを1つやらかした。
この件に関しては後述する。

逆サイドの今野はいいところまったくナシ。
守備に不安があるとはいえ、
あれなら内田の攻撃力を買いたい。
大久保はよく走って守備に貢献したものの、
FWの仕事は本来、点を取ることだろう。

本田はいけませんでしたねェ。
自分に速さがないため、周りがスピードに乗ってくれないと
機能しないタイプのプレイヤーなのかもしれない。
岡崎は1トップで使うのが正解でトップ下は彼には無理。
ところがあろうことか、自分の欠点をさらけ出してしまった。
技術がなく余裕もないから悲しいほどに周りが見えていない。
誰もいないところにパスを出すお粗末さ。
加えてフリーのシュートはGKの位置取りからして
ドライヴを掛けずにループを打つべきでしょ。
GKがまったく見えていないのである。

さて、多くの方々から見解を求められた2つのオウンゴール。
そもそもOGの得点献上者は特定されない習わしだが
あえてタブーを犯せば、あれは闘莉王と中澤ではなく、
長友と今野の責任だろう。
SBがいとも簡単にクロスを入れさせてはいけない。
N&Kが身体を張らないばかりに
T&Nが身体を張らされた結果があの2OG。
“ゴールマウスの前をボールが横切ろうとするときに
ゴールは生まれる”――けだし箴言(しんげん)である。
闘莉王の得点を含め、3得点すべてがまさしくこれだった。

以前、オウンゴールは自殺点と呼ばれた。
不穏な名称ゆえ、改名となったのだが
思い出されるのは1994年のアメリカ大会における
アメリカVSコロンビアの一戦。
イングランド戦の中澤のプレイに似たOGで
決勝点を献上したコロンビアのエスコバル選手は
帰国後、シンジケートの殺し屋に射殺されてしまう。
この事件後、日本では自殺点の名称が忌避されようになった。
自殺点が“他殺点”に及んだ悲しい出来事、
エスコバルはまだ27歳の若さであった。

 
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2010年6月3日(木)

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