「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第1024回
狭い地域に2軒の「金寿司」(その2)

駿河台下は小川町の「金寿司」ではない、
古書街・神田神保町の「金寿司」にて
蝦蛄(しゃこ)をつまんでいる。
北海道・北陸・伊勢志摩・瀬戸内・天草と
蝦蛄の産地は多々あれど、江戸前・小柴の蝦蛄が日本一。
食味はもとより、身のしまりと色合いもずば抜けている。

その理由は水揚げされる蝦蛄だけにあるのではない。
この小さな甲殻類を生活の糧にしてきた地元の漁民は
殻のむき方、身のゆで方に特有の技巧を備えている。
その証拠に腕に覚えのある名うての鮨職人でさえ、
活きている蝦蛄を自分でさばこうとはしない。
むかれ、ゆでられ、箱に収められた“出来合い”を
市場で買ってくるのである。

蝦蛄のハナシになるとつい熱くなっていけない。
そうこうするうち、干しほたるいかが運ばれた。
一夜干し程度を想像していたが
意に反して準スルメほどに固く干し上がっている。
噛めば噛むほど旨みがあふれるものの、
歯の弱い向きにはかなり厄介だ。

逆に本つぼ鯛の塩焼きはわが意を得たりの美味。
姿がよく似た的鯛ほどではないにせよ、
このサカナはもっと人々に認知されてよい。
レモンを搾りかけ、硬い皮目までペロリとやっつける。

にぎりの前に白身でも切ってもらおうか。
そう思いながらケースをのぞくと、白身は真鯛と平目。
青森産だろうか、平目がヤケに大きい。
ちまたでは平目は時期を終え、
真子がれいに移行しているはずだ。
白身には食指が動かず、
箸休めに玉ねぎの紫蘇漬を追加しておき、にぎりへ。
初っ端は一番好きな鮨種の小肌。
もうちょい酢を利かせてほしいが、なかなか。
そして赤貝・まぐろ赤身と継いだ。

ひかりモノに充実を見せる鮨屋はよい鮨屋。
ちゃんとした江戸前シゴトには
きちんと応えねばならぬ。
小肌で始めたにもかかわらず、再びひかり軍団に挑んだ。
悪くはない春子(かすご)は皮目が少々硬い。
軽く湯引いてやれば歯ざわりがグンとよくなるのに残念。

続いてのさばは上々の仕上がり。
さらにその上を行ったのが酢あじだ。
以前に何度もふれたけれど、
このサカナは“生”を生姜でやるよりも
“〆”をわさびでやるほうが断然よい。

そろそろ締めに取り掛かり、まず穴子。
これはごく普通の出来映え。
巻モノは鉄火を所望する。
すでに赤身のにぎりを食べているため、
中とろを巻いてもらった。
すると、これがほどよい脂のノリ。
思わず舌鼓をポンと鳴らしているうちに
締めくくりの玉子を失念してしまった。
フレンチやイタリアンに出向いても
デセール・ドルチェはめったに注文しないタチ。
その習性がときとして鮨屋でも表に出てしまうらしい。
せっかくの初訪問、食べときゃよかった。


【本日の店舗紹介】
「金寿司」
 東京都千代田区神田神保町2-2-28
 03-3234-6696

 
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2010年6月8日(火)

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