「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第1028回
天丼の仇(かたき)をもりそばで?(その1)

古くは日本武尊から太田道灌、
時代は下って徳川綱吉から明治天皇と、
そのときどきの権力者とゆかりを持つ根津神社は
毎年恒例、春のつつじ祭りでつとに有名である。
数年前に一度訪れてあまりいい思い出はないのに
何となくまた足を向けてしまった。
それも何を血迷ったか、GWの真っ只中に!

案の定、境内は人、ひと、ヒトである。
真夏の湘南海岸さながらに芋を洗うようだった。
人混みは大の苦手だが、それだけなら我慢できる。
絶えられないのは舞い上がる砂ぼこりだ。
広すぎて打ち水は不可能なのだろうが、これにはお手上げだ。
ほうほうの体(てい)で神社から逃げ出した。

もともと根津はJ.C.にもゆかりの深い町。
幼少のみぎりには根津小学校に通うハズだった。
入学直前の身体検査も根津小で受けている。
それが突然の引越しで平和島に転居したのである。
根津は上野動物園の裏手の谷間に開けた町で
動物園へは西園から入れば上野駅よりも近い。
不忍通りと言問通りがぶつかる交差点が町の中心になる。

ほこりにまみれて根津神社から脱出し、
腕時計を見るとそろそろ昼めしどき。
ちょうど交差点の一角に新しく開店したそば屋を発見した。
風格には欠けるものの、端正なたたずまいに好感が持てる。
ただし前夜がそば屋酒につき、連荘は避けたいので
次回にしようと思いつつも店頭の品書きに見入る。
「ほう、天丼があるじゃないですか」――思い直して入店。

飲みものメニューのビールの欄には
 一番搾り      六百円
 恵比寿       六百五十円

とあった。
所望したのはもちろん一番搾り。
だって恵比寿は飲み口が重くて値段が高いんだもん。

ご飯ものも2品のみ。
 天丼         壱千円
 かき揚げ丼     九百円

これは100円安いからといって
かき揚げ丼に走るわけにはいかない。
そもそも普段からかき揚げ丼を頼むことはないしね。
その理由はただ一つで
ずっと同じ味が続き、変化がないから飽きちゃうのだ。
“J.C.殺すに刃物は要らぬ、おんなじ味で出せばよい”
っつうことなんですわ。

待つこと10分弱。
やって来ました天丼クン。

見た目の第一印象は悲喜こもごも
photo by J.C.Okazawa

なぜ悲しみと喜びがゴッチャかというと
小皿の野沢菜がチョッピリうれしく、
天ぷらのかぼちゃとアスパラに大きくガッカリという次第。
お椀の不在も落胆に拍車をかけることとなった。

根津神社で砂ぼこりにまみれたあと、
そば屋「杉むら」でも一敗地にまみれたことになる。
何だか気が抜けてしまい、
とにかく気が抜ける前のビールを飲み干し、
ションボリと割り箸を手に取ったのでした。

            =つづく=

 
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2010年6月14日(月)

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