「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第1042回
無性にビールが飲みたくなって(その2)

神田駅前でビールを探し求めている。
チェーン店のコーヒーショップか
町場の喫茶店でも仕方がないと、心を決めかけていた。
そのとき、電光石火のごとくにひらめいた。
池波正太郎翁ではないが
そば屋という奥の手があったのだ。

翁は「酒を飲まぬくらいなら蕎麦屋には入らぬ」とまで
言い切ってはばからなかった。
江戸の市井を活写した翁ならともかく、
われわれ庶民にとって
酒とは何も清酒に限ったものではなかろう。
ましてやこの蒸し暑い梅雨どきの晴れ間である。
冷えたビールをたしなんで悪いことなど何もない。

心の中の暗雲が消え去り、
この日の空模様のように気持ちが晴ればれとしてきた。
池波翁が愛してやまなかった旧連雀町の「まつや」は
相席必至につき、卓上に書類など広げられない。
加えて神田駅からはちょいと距離がある。
むしろ千代田区から中央区に区境を越えて
「室町砂場」に廻るほうが得策と思われた。

2人用の小テーブルに案内される。
隣りのテーブルも同じサイズで
そこに座した先客とは横並び状態。
何だか同席しているような感じになった。
ビールはキリン・アサヒ・サッポロと三大メーカーが勢揃い。
その中からアサヒをお願いした。
もちろん大瓶である。
ビールに添えられた突き出しは梅くらげ。
老舗らしからぬ出来合い品は感心しないが
ベター・ザン・ナッシングではある。

昼と夜のあいだに間食は取らないタチながら
ビール1本では店方も商売にならない。
そこで玉子焼きと新香を所望した。
「室町砂場」のこのコンビは
幾度食べたか数え切れないほどだから
その味を舌が知りつくしている。
つまみでビールを3分の2ほど飲み。
器を下げてもらい、一仕事片付けながら残りを飲み干す。

昼間の酒はよく回る。
ホロ酔い一歩手前という心地になった。
玉子焼きは余計だったかな? などと反省しながらお勘定。
「おそばは召し上がらなかったのですネ?」――
レジでオネエさんにこう訊かれた。
このお訊ねからも「砂場」でそばを食わない客は
きわめてまれだということが容易に推測できる。
千円札2枚で支払うと、150円のオツリが手元に残った。

食事どきを外したそば屋の昼酒は
リラックスできて実によいものだ。
そばを食べなきゃ悪いような気もしないではないが
そこは片目をつぶってもらい、
これからビールが旨くなる季節、
せいぜい利用させていただく所存である。

一昨日、昨日と“期間中閑あり”で睡眠はじゅうぶん。
今夜から再び徹夜が2晩続くと思うとこれもまた楽し。
準々決勝の勝ち残りはブラジルとウルグアイ、
そしてアルゼンチンとスペインだろう。
スペイン以外はどちらが勝っても不思議はないが
岡田ジャパンの目指した四強はすべて
ラテン民族に占有されることとなろう。

【本日の店舗紹介】
「室町砂場」
 東京都中央区日本橋室町4-1-13
 03-3241-4038

 
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2010年7月2日(金)

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