「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第1044回
サクッとたぐった二色もり

新橋「本陣坊」はそば居酒屋のハシリかもしれない。
もちろんずっと前から酒を飲ませるそば屋はあった。
藪系、砂場系の老舗も例外ではない。
ただ、それらの店は暖簾をしまう時間が早く、
騒がしい酔客の姿も見えず、
粋にして品もよいから居酒屋というのは当たらない。
神田「まつや」や浅草「並木藪」を居酒屋と呼んだら
熱いかけそばを頭からぶっかけられそうだ。

「本陣坊」は一帯に数軒の姉妹店を持ちつつも
屋号が異なるためにチェーン店のイメージはない。
真っ当なそばを供する店舗群では数少ない成功例だろう。
新橋・浜松町を中心として京橋や御徒町にも
傘下の店を展開しており、いずれもハズレがない。

今年はカラ梅雨なのか、好天に恵まれる日が多い。
そのおかげで暑さをまったく意に介さないJ.C.は
自由自在に都内を歩き回っている。
テクテク、トコトコと、止める者とてないから思いのまま。
でも、さすがにラーメン・うどんのような熱い汁ものを
昼に食べる気はしない。

冷やし中華は好物だけれど、
こればかりは清潔な店でないといけません。
町場の中華屋で条件をしっかりとクリアするところは
残念ながらやはり少ないのである。
となれば、必然的に日本そば屋を利用することになる。
別に偏見で言うわけではないが
相対的に判じてそば屋とラーメン屋では清潔度に差がある。
調理人の白衣の汚れからして格段に違うもの。
日本そば屋の長所はこの衛生性にあると言ってよい。

神楽坂・本郷・湯島・広小路を経て蔵前に向かう道すがら、
騒音と排気ガスで悪名高き昭和通りを横断した。
交差点角地のディスカウントストア「多慶屋」には
いつ通りかかっても、人だかりが絶えることがない。
時計を見るとすでに12時半。
この時間の昼めしは心して軽く済ませねばならない。
重ければ、晩めしに悪影響を与えるからである。

思い出したのが「本陣房」チェーンの「吉仙」。
久しぶりにここの柚子切りが食べたくなった。
「多慶屋」の買い物カードを提示すると5%オフになるせいか
昭和通りに面する悪条件をものともせずに店内は盛況で
接客の娘さんたちが忙しく立ち働いている。
せいろ・柚子切り・田舎の三色もりを我慢して
田舎を除いた二色もりでお願いした。

最初に柚子切りが運ばれる。

抜群の歯ざわりが魅力
photo by J.C.Okazawa

この店が紫蘇切りをやらなくなって何年になるだろう。
本当は紫蘇が一番ながら
柚子も都内屈指の変わりそばであることは確かだ。
シコシコを超え、ポクポクとした食感が歯に快い。

続いてはせいろ。

打って変わってこちらはモチモチ
photo by J.C.Okazawa

柚子切りには無用のさらしねぎ・おろし・わさびを
ここで始めて使う。
苦言はおろし置きのわさび。
生わさびなのに辛みも香りもスッ飛んでいた。

甘みを抑えたそばつゆにそば湯を注いでホッと一息。
湯で割られることによっていっそうまろやかさを醸すつゆ。
徳利のつゆがカラになるまで、飲んだそば湯は猪口に2杯半。
氷入りのお冷やも大きめのグラスに2杯。
ビールを飲まずに済ませる名案がこれである。


【本日の店舗紹介】
「吉仙」
 東京都台東区台東4-8-5 わかばビルB1
 03-5688-1200

 
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2010年7月6日(火)

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