「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第1050回
西新宿の老舗ビストロ(その2)

新宿駅と東京都庁にはさまれた一角、
「ル・クープシュー」に来ている。
目の前にはセウタが湯気を立てている。
セウタという聞いたことのあるようなないような名前は
北アフリカの港町に由来している。
ジブラルタル海峡のモロッコ側にスペイン領の飛び地があり、
面積19平方km、人口7万5千人のその町がセウタだ。

料理のセウタは魚介類のトマト煮込み。
この店では海老・あさり・ツブ貝・帆立が使われていた。
甲殻類と貝類だけで魚類は不在ながら
彼らの出汁がピリ辛のトマトソースに溶け込んでいる。
なかなかの出来栄えであった。

続いてはメインディッシュを2皿。
2人で取り分けるため、時間差で来てもらった。
第一の皿は雉(キジ)のロースト。

皮目をパリッと焼き上げて
photo by J.C.Okazawa

最近ではめったに見ない食材となった雉は
鳩や鶉(ウズラ)の赤色系と違い、
チキンのように白色系の肉質をしている。
地鶏のような歯ごたえを持つものの、
あえて雉と指摘されなければ、チキンとの判別は困難。
素材があまりよくなかったせいか、
ガルニテュール(付合わせ)のポテトのほうがよい。
炒めた玉ねぎをじゃが芋に加えた、
いわゆるリヨネーズ(リヨン風)である。

第二の皿は骨付き仔羊のやはりロースト。
こちらはフレンチの定番メニューだ。

焼き上がりはレアに近いミディアム・レア
photo by J.C.Okazawa

ご覧のように赤身肉は火の通し浅めがよい。
ガルニはラタトゥイユで
ココットはミント風味のジュレである。
仔羊とミントはきわめて相性がよいのだ。

雉と比較すると、仔羊に分があり、
これは広く流通している食材のほうが
良質のものを調達しやすいということだろう。
残念ながら雉にはやや不満が残り、
仔羊には及第点を上げられる。

いつものようにデセールはパス。
友人もまったく興味を示さず、
ちょうどワインのボトルも空いたのでお会計。
お二人様、壱万弐千円也とCPは高い。
このあたりがフランス料理店としては
けして恵まれぬロケーションの新宿にあって
長く生き残れている要因かもしれない。
「ギャラリー・クープシュー」なる姉妹店が
近所にあるくらいだから、まさにご同慶の至りである。

満腹という感じではなかったが、腹ごなしに東口に回り、
2丁目(誓ってあちらの趣味はございません)を経て
1丁目に差し掛かる。
そこで目についたのが「そば処 更科」。
日本そば屋なのにラーメンが有名な店と聞き及んでいる。
ここであったが百年目、一も二もなく飛び込んだ。
はたしてこれが傑出しており、
中華そばファンにはうってつけの懐かしの一杯だった。
しなやか細め真っ直ぐ麺に鶏ガラが主張するスープ。
コテコテラーメンが苦手な方限定で
近くに来たら、ぜひお試しを。


【本日の店舗紹介】その1
「ル・クープシュー」
 東京都新宿区西新宿1-15-7 ライフビル1F&B1
 03-3348-1610

【本日の店舗紹介】その2
「そば処 更科」
 東京都新宿区新宿1-30-5
 03-3351-2951

 
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2010年7月14日(水)

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