「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第1051回
アラブとインドに架ける橋
=れすとらん しったかぶり=
あのころのニューヨークシリーズ(7)

およそ15年前のまだ平和だったニューヨーク。
アメリカ合衆国とアフガニスタンの関係も
当時は今とはまったく違っていた。
隔世の感を抱きつつ、
今回はニューヨークのアフガンレストランを
紹介するコラムをお届けしたい。

イランの米大使館人質事件の処理を
誤った末期のカーター政権が
アフガニスタンに侵攻したソ連に抗議して
モスクワ五輪をボイコットしたのは1980年。
あれから15年になろうとするのに
アフガンの戦火は今も消えることはない。

西アジアの火薬庫はおいしいモノの宝庫でもある。
アラブとインドの2つの文化圏のはざまで
双方のいいとこ取りをした結果がこれだろう。
両圏内の主食は米と小麦、そこに少量の羊肉が添えられる。
アラブは肉をじかに炙ってハーブをあしらい、
インドはスパイスを利かせてジックリ煮込む。
その典型的な例がケバーブとカレーだ。
幸せなことにアフガン料理はその両方を併せ持つ。
モスリムとヒンドゥーも料理のように融合してくれると
世の中もっと平和になりそうなものだが
無神論者の俗人が宗教に口をはさむのは控えよう。

「Pamir」はニューヨーク随一のアフガン料理店。
店名の由来はヒンズークシ山脈の北に広がるパミール高原。
パリッと揚がったサモサ、インドよりマイルドなカレー、
ともにけっこうながら、イチ推しはパミール・ケバーブだ。
これぞ炙り肉の“夢の競演”である。
若鶏胸肉・仔羊もも肉・牛挽き肉のミートボール、
それぞれに旨さいっぱい。
極めつきは骨付きあばら肉。
フィレもちょっぴり付いてTボーンステーキさながら。
サイドの玉ねぎ・ピーマン・ピラフは
主役を支える不可欠の名脇役である。

イーストヴィレッジの「Khyber Pass」は
有名なカイバー峠のこと。
カブールとイスラマバードを結ぶ幹線道路の国境地帯にあり、
ソ連軍が侵略したときには
峠を通っておびただしい数の難民が流出した。

ケバーブがイマイチのため、人気はカレー類に偏る。
羊の挽き肉やスカーリオン(小ねぎ)を使った、
ダンプリング(餃子)はビールの友にうってつけ。
若者の街だけに値段もグッと安くなるが
安かろう、悪かろうの愚店ではない。
舌の肥えた年配者にも推奨できる佳店だ。

と、まあこんな調子でアフガン料理店には
ちょくちょく足を運んでいた。
まさかその後、“9.11の悲劇”が起こり、
ソ連に変わってアメリカが進駐しようなどと
誰が想像しえただろうか。
さすがにこればかりは
お釈迦様でも知らぬ仏のビンラディン。
当時はタリバンなんて、見たことも聞いたこともなかった。


【本日の店舗紹介】その1
「Pamir」
 1437 Second Ave.
 212-734-3791

【本日の店舗紹介】その2
「Khyber Pass」
 34 St.Marks Pl.
 212-473-0989

注:移転・閉店の可能性があります

 
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2010年7月15日(木)

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