「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第1055回
ぶらり多摩川線の旅(その4)

かつて城南地区唯一の紅燈街だった武蔵新田。
ふらりと入った天ぷら屋「ころも」で
カマスの刺身を肴に酒を飲んでいる。
その前のコチと比較しても
あまり期待を抱かなかったせいか
カマスがよいのは存外であった。
バラクーダと呼ばれて欧州の子どもたちに
恐れられる大カマスなどと違い、
これはおそらく本カマスの別名を持つ赤カマスであろうな。

そう言えば、最初に出て来た突き出しは漬物だった。
きゅうりぬか漬・白瓜奈良漬・山ごぼう醤油漬の3点盛り。
酒の友にしながら、こういうのもありだと思った。
漬物のレゾン・デートル(存在理由)は
第一にごはんのおかずの脇役だろう。
それが酒肴の仲間に加わっても全体の厚みが増す。
地方へ行くと、殊にお年寄りの間では
お茶受けとしての役割も重要なものがある。

そろそろ天ぷらを揚げてもらわねば・・・。
そう思いつつ、飲みもののリストをチェック。
J.C.は清酒よりも焼酎派につき、居酒屋はもとより
鮨屋でも天ぷら屋でも焼酎をロックで飲むことが多い。
それがおでん屋とそば屋に限っては日本酒が優勢となる。

品揃え豊富とまではいかないものの、
焼酎のラインナップは気に染まった。
特に芋焼酎ファンには訴えるものがある。
芋は富乃宝山・萬年・田倉の3種類。
麦は1種類で一粒の麦。
ほかには泡盛のたまるがあるだけだ。

天ぷらの品書きは明快至極。
魚介は一律400円で野菜が130円。
あとはかき揚げが1000円。
一品料理の欄に新ごぼう天ぷら(270円)を見つけ、
食指がピクリと動いて、まずはこれから。

意外にもななめ切りで来た
photo by J.C.Okazawa

店主は柔らかい新ごぼうだけに
よくあるマッチ棒状にしなかったようだ。
これもまた旨し。

魚介系は穴子だけにしておく。
刺身を2種類いただいて
サカナに飽きたというわけでもないけれど、
当夜は野菜の天ぷら、いわゆる精進揚げが食べたかった。
青みがほしくてピーマンといんげんをお願い。

肉厚でシャッキリ感を残したピーマン
photo by J.C.Okazawa


絹さやと並んで大好物のいんげん
photo by J.C.Okazawa

野菜を揚げたがらない、生粋の江戸前天ぷら屋が
例外的に扱う青唐よりもピーマンが好きだ。
いんげんは洋食のガルニテュールにしてよし、
厚揚げなんぞと一緒に煮物にしてもよしである。

締めにはこれも好物の玉ねぎ。

なかなか粋な出し方をする
photo by J.C.Okazawa

庶民的な天ぷら店ながら
この切り口を見て思わずうなった。
ちょっと見は帆立の貝柱ではないか。
手放しですばらしいとは言えないまでも
訪れて悔やむことのない優良店である。

「ぶらり多摩川線の旅」を謳ったわりには2駅のみ。
読者諸兄にはご不満の残る向きもござろうが
そろそろ都心に戻らねば・・・。


【本日の店舗紹介】
「ころも」
 東京都大田区矢口1-15
 電話は非掲載の模様

 
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2010年7月21日(水)

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