「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第1057回
闇夜に浮かんだちょうちん(その1)

7月に入って、ほぼ毎晩のように立ち飲んでいる。
それもすべて酒屋さんの店の中で――。
これをもって“角打ち”と称するが
初めて耳にする方も少なくないのではないか。
そのむかし、北九州地方に発祥したこの言葉は
酒屋の店内における立ち飲みを指す。
枡の角に粗塩を打って味わう、
樽酒に由来するというのが定説だ。

8月12日発売の月刊「めしとも」で
角打ち大特集を打つこととなり、
お鉢がJ.C.に回ってきたための角打ちめぐりである。
過去において何度か経験はしているものの、
意気込んで訪れるのは今回が初めて。
するとたちまち真価に目覚めてしまい、
今ここで紹介したいことが山ほどあるが
詳しくは当該号をお読みくだされ。

その夜は芝一帯で3軒の酒屋を飲み終えていた。
芝という町にはまだまだ古い小さな商店街が
ここかしこに残っており、
隠れた角打ちの宝庫とも言えるのである。

4軒目として目指したのは隣り町の三田。
都営地下鉄・三田駅そばの目的地にたどり着いたら
目当ての酒店はチェーン居酒屋に取って替わられていた。
やれやれ、嘆かわしやと肩を落とす。
こんなところに代替となるべき酒屋などあるわけがない。

角打ちの場合はたとえ3軒を回ったあとでも
つまみはごくごく軽いものしか口にしていないから
腹にはまだまだ余裕が残っている。
これにて本日の角打ちは打ち止めとし、
ちょいと遅めの晩めしを決め込んだ。

駅前から100メートルほど慶大方面に向かって
歩いてゆくと赤いちょうちんが目に入った。

店名のない暖簾とちょうちん
photo by J.C.Okazawa

店先では餃子専門の店とは気づかず、
てっきり餃子が自慢のラーメン店だと勝手に思い込む。

店内は7〜8席のカウンターのみ。
先客は餃子でビールを飲むサラリーマンが2人と
同じく餃子で白飯を食べるOLが1人。
切り盛るのは女店主独りきりだ。

できるものは焼き・水・野菜の餃子(各450円)に
餃子定食(700円)と
なぜかジャージャーメン(700円)だけ。
ラーメンがないのにジャージャーメンとはこれいかに?
よほどの人気商品か、昔ながらの店の名物か、
いずれにしろ特別な理由があるに違いない。
さもなければ東京人の間で
さして人気があるでもない特殊な麺が
限られたメニューの一角を占めることなどありえない。

遅ればせながらご存じない方に説明すると
ジャージャーメンというのは
汁ナシ味噌そぼろ餡かけ麺のこと。
冷やし中華のように
千切りきゅうりを添えるのが一般的で
いわば中華風ボロネーゼである。

定石通りにビールと焼き餃子を1人前お願いした。

           =つづく=

 
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2010年7月23日(金)

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