「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第1066回
やぶ蚊がとまればカメラが壊れる

8月12日発売の「めしとも」9月号では
酒屋での立ち飲み、いわゆる角打ちの特集を任された。
7月に訪れた角打ちの数は40軒近く。
土日祝休の店がほとんどであるうえ、
平日は飲み会や食事会に明け暮れる身、
合間を縫って回るのだから
フリーの夜にはまとめて5軒ほど回ったりもした。

その夜もJR鶯谷駅前から30分以上歩いて
東日暮里「家谷酒店」を訪問後、
そこからやはり30分以上の距離にある、
南千住「森田屋酒店」を目指す道すがら
荒川2丁目と4丁目の間のさびれた商店街を通った。
「キッチン妻」だの「スナック三姉妹」だの、
およそセンスのかけらもない店名が並んでいる。
失礼ながら荒川区ならではの
ベタでディープなネーミングであろう。

方角がそれていることに気づきながらも
乗りかかった舟とそのまま道なりに
とうとう町屋駅前に出てしまった。
やれやれ、「森田屋」まではまた徒歩30分はかたいところ。
われながら暑いさなかに、バッカじゃなかろか!

気を取り直して京成線の高架沿いを進み、
町屋のシンボル「ときわ食堂」に差し掛かった。
このとき目を引いたのが店頭の貼り紙である。

産地偽装事件で話題になった一色産うなぎ
photo by J.C.Okazawa

産地はともかく、心乱されたのが新子うなぎの5文字。
小肌の新子同様に子どものうなぎので
穴子ともども、めそっ子と呼ばれる幼魚だ。
この小ぶりなうなぎを数匹使い、
重箱に敷き詰めたのが筏重(いかだじゅう)。

我慢できずに引き戸を引くと、
まだ18時前なのに空卓がまったくない。
相席ならばなんとかなるものの、
ここは“大衆食堂”を名乗りながら実質は“大衆酒場”。
仕事帰りの晩酌の前で飯を食ったら相方に迷惑、
あとでまた来ようと、南千住に進路を取った。

角打ち「森田屋」はなかなかのたたずまいを見せていた。
外観のスナップをとデジカメをスイッチオン。
そのときであった! 
不敵にも1尾のやぶ蚊が右手の甲にとまったのは!
やぶ蚊ら、もとい、藪から棒とはこのことである。
そこはJ.C.、人一倍鋭い反射神経の持ち主、
フッフッフ、飛んで火にいる夏の虫とはお前のことよ、
独りあざわらい、空いた左手でピシャリと一撃!
バッチリ仕留めてやった。
仕留めるには仕留めたのだが、
同時に右手に持ったカメラがアスファルトとガチンコ勝負。

「レンズエラーが発生しました」の表示は
早いハナシがブッ壊れちまったわけだ。
だから帰りに寄った「ときわ食堂」の新子うなぎの写真が
残念ながらお見せできないのである。
まったくもってトホホなのである。
おまけに新子うなぎとは名ばかりで大きく成長してしまい、
しかも焼きすぎにして、タレの甘さまでもがだらしない。
つくづくうなぎは専門店に限ると肝に銘じた次第。
J.C.的にこの日はまさに天中殺。
くだんのデジカメの修理代は1万円でしたとサ。


【本日の店舗紹介】
「ときわ食堂」
 東京都荒川区荒川7-14-9
 03-3805-2345

 
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2010年8月5日(木)

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