第1068回
煮込みからの解放
今週12日(木)発売の「めしとも」9月号は
内容が刷新されて、連載コラムもガラリと変わる。
J.C.担当の「男には極めたい飯がある=煮込み=」とて
例外ではなく、8月号の「赤津加」で無事終了。
新しい連載シリーズ、「B級グルメ 男の作法」がスタートする。
フランス料理のテーブルマナーほどに
肩のこるものではないにせよ、
B級にはB級なりの作法・しきたり・ならわし・掟・法則が
存在しないわけではない。
そのへんを紐といてゆき、
必ずや読んでトクするコラムに仕立て上げますゆえ、
お目通し願えれば、ありがたき幸せであります。
ということで煮込みばかりを食べ続ける必要がなくなった。
元来、好きな煮込みのこと、
苦痛を感じたことはないが、さすがに連日連夜に渡ると
あまりうれしいものではなくなった。
今は同じ9月号のミッション、
角打ちめぐりの原稿を書き終えて一息ついている。
暑中、寒あり、もとい、忙中、閑ありの心境だ。
一握りの例外を除き、角打ちに煮込みはないから、
久々に旨いヤツを食べたくなった。
思い立って、今をときめくスカイツリーの足下に出向く。
これだからこれからの下町はたまりませんや。
世界一の高さを誇る一大鉄塔の足元で
ホッピー片手にもつ煮込みなんて芸当は
そう簡単にできやしませんぜ。
山の手の住人には夢のまた夢でしょうよ。
ましてや関西人にこんなマネは
逆立ちしたって出来っこないんだ。
しょぼい通天閣の下でドテ焼きなんぞを
頬張って喜んでいる浪花っ子が可愛そうで仕方がない。
まったく関係ないけど、
この調子じゃ今年もタイガースの優勝はお預けだろうて。
憎まれ口はこのへんで打ち切り。
さてさて、やって来ました業平橋「松竹」。
余談ながら南千住のコツ通りにも
古くから「松竹」なる優良な洋食屋があるが
そちらとは縁も所縁もない母と娘が2人で切り盛りする
煮込みと焼きとんの店だ。
女将さんがちょうど30歳のとき、
長嶋茂雄が巨人に入団した年に屋台で開業し、
だんだん常連が付いてこれなら大丈夫と、
その7年後に店舗を構えた。
女将の実家は松戸・旧市街、角町の煎餅屋である。
ビールの中瓶をまたたくまに空け、
お次は珍しくもブラックニッカのハイボールだ。
カゲツという銘柄の炭酸がキツくて旨い。
煮込み(480円)は1人前を大鍋から行平鍋に移して加熱する。
具材は豚のガツ(胃袋)とこんにゃくのみの潔さ。
あとは仕上げの刻みねぎだけである。
白味噌仕立てのつゆはサラリとして飲み干せるほど。
純正統派煮込みを食べ終え、1種2本からの焼きとんに移行。
1人前4本(480円)で、タン、ハツ、ナンコツ、レバー、
カシラ、シロ、テッポウ、ツクネとある中から
レバーとシロを2本ずつ、タレでお願いした。
ちなみにコブクロ(子宮)だけは3本480円。
ここは何でも480円なのだろうか。
締めに厚揚げを焼いてもらうと、これが当夜のベスト。
備長炭で焼かれるんだもの、旨いに決まってる。
しかもおろし立ての生姜がこれでもかとタップリ。
おまけに刻みねぎも山盛りである。
このケチらなさがすばらしい。
そしてなぜだか、厚揚げ焼きも判で捺したように480円でした。
【本日の店舗紹介】
「松竹」
東京都墨田区業平2-9-10
03-3623-6913
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