「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第1070回
人気店で また肩透かし(その1)

大田区・蒲田に東京一のベトナム料理店があるという。
その店「ミ・レイ」の存在は数年前から知っていた。
それでも長いこと食指が動かなかったのは
韓国やタイほどではないにしても
ベトナム料理を好むほうではないからだ。

好まぬ最大の理由は魚醤にある。
タイのナンプラー、ラオスのナンパー、
ベトナムのニョクマム、フィリピンのパティス、
そしてトマトケチャップと語源を同じくする
インドネシアのケチャップ・イカン。
まったくアウトではないにせよ、明らかに得手ではない。

韓国料理に魚醤は使わんだろうと指摘される向きもあろう。
ところがかなり“サカナ臭い”ものがある。
半島の料理に欠かせないキムチにしてからに
あっさりタイプならまだしも魚介をどっさり投入して
薬念(ヤンニョム)の利いた濃厚なのは箸がすすまない。
概して濃い味付けは苦手、水キムチのほうがありがたい。

キムチにオキアミやカキを入れるようになったのは
200年ほど前のことらしい。
江戸時代に何度か来日した朝鮮通信使が唐辛子を持ち帰り、
その腐敗防止作用のおかげで
腐りやすい魚介を使うことが可能となった。
これによってキムチのヴァリエーションが飛躍的に拡がった。
通信使も余計な土産を見つけたものだと個人的に思う。

日本の若い女性はオヤジに逆らうがごとく、
タイやベトナムの、いわゆるエスニック料理を好む。
その習性を利用して若い娘を1羽、
もとい、1人調達して「ミ・レイ」に出向いて行った。
事前にハッキリさせておくが
これは店からの“お持ち帰り”ではなく、
店への“お持ち込み”である。
着いてみたら店の真ん前はラブホである。
パートナーの誤解を招かぬように気をつけたい。
まあ、こんなところがいかにも蒲田らしい。

店内は熱気ムンムンである。
カップルよりも女性中心のグループが優勢で
中にはガキンチョもチラホラと混じっている。

ほぼ満卓のご盛況
photo by J.C.Okazawa

事前調査ではドリンクメニューが弱そうだったが
料理に合う、合わないは別として
意外なことに乙類焼酎があった。
全体的に飲みものの値付けが高い。
ロケーションのショボさ、内装のダサさを考慮すると
評価はグッと下がり、人気店特有のあざとさが透ける。

ベトナム産ビールの333(バーバーバー)で
乾いたノドを潤してはみたものの、
どうもこのビールは南国の夜風に
吹かれながら飲むにはよいが
蒲田の喧騒の中ではシラケる感じ。
それではと2杯目からはサッポロの生に切り替えた。
でも生小サイズで600円はボリ過ぎだろう。
何だか胸の奥にモクモクと暗雲が立ち込め始めた。
この様子じゃ、料理のほうもヤバいかも・・・。

            =つづく=

 
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2010年8月11日(水)

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