「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第1071回
人気店で また肩透かし(その2)

蒲田のベトナム料理店「ミ・レイ」でメニューの吟味中。
料理の種類はかなりあるのだが
あまり食べたいと思うものがみつからない。
逆に相方のヤングレディは張り切っている。
普段、あんまりいいモン食ってないな、これは。

注文したのは定番の生春巻(ゴイ・クォン)。

生春巻には甜麺醤(テンメンジャン)のソース
photo by J.C.Okazawa

何の変哲もない空芯菜炒め。
あとは豚のスペアリブと牛肉入り米粉である。

牛肉の米粉には香草がふんだんに
photo by J.C.Okazawa

4皿の料理はそれぞれに水準をクリアしていた。
だが、どこかもの足りない。
原因を探し求めるとオリジナリティの欠如に行き着く。

ゴイ・クォンの具材にニラの使用はシラケるし、
空芯菜に投入されたオレンジ色の激辛唐辛子には舌を焼いた。
なぜかスペアリブより先に来た米粉は汁なしフォーの様相。
てっきり焼き米粉と早合点していたから拍子抜けだ。
スペアリブはこゴイ・クォン同様に甜麺醤のおかげで
町の肉屋の豚肉味噌漬けにそっくりの味だ。
結局、汁なしフォー以外はみな退屈だったのである。

繁華街のあちこちで雨後の竹の子の如くに出没している
小皿がウリの中華料理店とさほど変わないし、
肝腎の支払い価格も中華のほうがずっと安い。
この値段ではベトナムの留学生にはとても手が届かない。
本国人が食べられないエスニック料理は空虚だ。
自作の米を口にできない、かつての農民の姿がダブった。
これが東京のエスニック料理界の実態であり、
人種のるつぼ、ニューヨークとの大きな差になっている。

1995年の初秋。
初めてベトナムのサイゴンを訪れた。
ホーチミンシティと改名させられた街である。
着いたその夜はREXホテルの「Roof Top Garden」で夕食。
REXはコロニアル調のホテルでありながら
シガポールのラッフルズのような気取りがなく、
くだけた雰囲気が気に入った。
昨年だったか、改装されて五ツ星ホテルに昇格している。
料理は越仏折衷といった感じで
揚げ春巻(チャー・ジオ)、舌平目のムニエル、五目炒飯と
それぞれにおいしく、好印象を持ったのだった。

翌日の昼に訪れた「Vietnam House」も期待以上。
ここでは淡水海老とチキンカレーを堪能した。
その夜のフレンチ「La Cigalle」ではギガルだったろうか、
コート・デュ・ローヌ‘94年が若いわりにとてもよかった。
ロニョン・ド・ヴォー(仔牛の腎臓)の
コニャッククリーム・ソースはなかなかだったし、
ウインナー・シュニッツレルに添えられた
ポムフリット(揚げたじゃが芋)の旨さには脱帽だ。
残念なことにコキーユ・サンジャックの帆立貝柱だけが
鮮度落ちで新鮮なモノに取り替えさせた記憶がある。

そんな経緯もあって「ミ・レイ」には不満が残った。
これが大田区の実力と切り捨ててしまえばそれまでだけど、
小学生時代の大半を過ごした土地ゆえに今でも愛着がある。
奮起を促したい。

“超”の付く人気店でまたもや肩透かしを食ったが
相方の注文したドリンクの見た目が涼やかで
文字通り、一服の清涼剤となってくれたのは救い。

ライム&ミント・ソーダ
photo by J.C.Okazawa

ここにラム酒を足せば文豪・ヘミングウェイが
ダイキリとともに愛したモヒートの一丁上がりとなる。
女性にもウケるオサレなロングドリンクは今、
一年で一番おいしい季節を迎えている。


【本日の店舗紹介】
「ミ・レイ」
 東京都大田区蒲田5-1-4関根ビル2F
 03-3732-3185

 
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2010年8月12日(木)

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