第1072回
ハダカ麦の焼酎
今日はめでたい13日の金曜日。
常日頃、詐欺まがいなことをして悪銭を稼いだり、
アコギな真似で他人様から怨みを買っている人は
ゴルゴ13に狙撃されないように気をつけましょう。
ハナシは急遽、北九州に飛ぶ。
といっても福岡県・北九州市ではなく、
大分県・宇佐市のことだ。
国東半島の付け根に位置し、周防灘を北に臨むこの街に
1919年創業の四ツ谷酒造がある。
この酒造場が産する銘酒が知る人ぞ知る麦焼酎・兼八である。
麦といっても珍しいハダカ麦とハダカ麦麹から造られる兼八は
鼻腔に抜ける香ばしさが命の人気銘柄。
7〜8年前は安価で手軽に飲めたものだが
いつの頃かブレイクしてしまい、
森伊蔵ほどではないにせよ、庶民には高嶺の花となった。
J.C.はこういうのを無理して追いかけることをしない。
「プレミアム=無駄遣い」と固く肝に銘じているのだ。
それでもたまさか料理屋で遭遇したときには
つい1杯、2杯と引っ掛けてしまう。
昔、つき合っていたオンナを街で見かけ、
思わず声を掛けてしまうのに似ている。
未練心につまずくとは、まさにこのことであろう。
最後に兼八を飲んだのはいつだったか調べてみた。
フード・ダイアリーによれば、ずいぶん以前の2004年9月、
人形町の焼き鳥屋「荻(てき)」においてであった。
かれこれ6年の月日が流れたことになる。
そのまた前は2003年5月、
丸ビルの和食店「魚新UOSHIN」だ。
今回、6年ぶりで兼八に再会したのは六本木「鮨なかむら」。
ミシュラン東京の一ツ星獲得店である。
ほとんど何の役にも立たない駄本ゆえ、
ミシュラン云々はどうでもいいことだが
やはり出会えば“飲指”が動く兼八であった。
麦・芋に限らず、焼酎は必ずロックで飲む。
割り箸を使い、シツコいくらいにステアして
冷え冷えになったところを一口含み、
暫時、口内を転がして飲み下す。
おおっ、舌が鼻が味を香りを鮮明に覚えていてくれた。
通常、数本空けるビールを抑え、
ロックを3杯飲み干してシアワセな夜だった。
焼酎の話だけで終わらせては「鮨なかむら」に礼を失する。
当夜のいただきものは下記の通り。
つまみ――生とり貝・真子がれい・蒸しあわび・
金目鯛ひと塩焼き・天然うなぎ塩焼き・
煮あさり
にぎり――真子がれい昆布〆・春子・小肌・生あじ
子なし蝦蛄・車海老・赤身・中とろ・
玉子・かんぴょう巻き
赤字は特筆モノである。
外房のあわびは塩でやると個性が際立つ。
煮あさりは定番の煮はまぐりを凌駕するかもしれない。
金目は脂ノリノリで、四万十川のうなぎは意外にあっさり。
春子は育ちすぎで、小ぶりの真鯛といったサイズ。
能登半島の蝦蛄はシットリ感があるものの、コク味に欠けた。
強めに〆た小肌は好みのタイプ。
〆られると魚種の判別がまったく不能になる愚舌の持ち主、
禿げちょろけの友里征耶なら
間違いなく拒否権発動の“酸っぱい小肌”であった。
【本日の店舗紹介】
「鮨なかむら」
東京都港区六本木7-17-16
03-3746-0856
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