「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第1077回
その日のデパ地下(その2)

「ローマイヤ」の次は地下一番奥の鮮魚売り場である。
そこにめぼしいものがなければ
御徒町駅前の「吉池」に回るつもりだ。
品揃えが豊富なのは広い売り場を持つ「吉池」だが
クォーリティでは「松坂屋」が一枚上手。
加えて後者には「湯島 丸赤」が出店している。
もっとも「丸赤」ならば、
すぐ近所の本店を利用したほうが賢い。

ザッと一回りして目についたのは縞あじの背アラ。
血合いの目立つ部位とはいえ、
繊細な食味を持つ縞あじである。
愛媛産の養殖モノながら、その値段を見て驚いた。

4尾分の背アラがたったの150円
photo by J.C.Okazawa

もともと縞あじの天然モノはきわめて漁獲量が少なく、
市場に出回っているのはほとんどが養殖。

さてさて、ちょいとばかり手間が掛かっても
この獲物を見逃す手はあるまい。
しかも店頭に並んでいるのは1パックのみ。
結局、鮮魚売り場で買ったのはこれだけだ。
縞あじクンは経費削減に大いに貢献してくれた。

帰宅後、パックを開いて皿に並べてみた。

そこそこ食べでがありそうだ
photo by J.C.Okazawa

はて、どうしたものだろう。
しばらく思案して4本とも真ん中から両断し、
2本分は醤油と日本酒が同割りの調味液に浸す。
残りは新生姜の味噌漬を仕込んだ味噌床に漬けた。
この床は味噌4に対し、日本酒が1の割合。
使った醤油は名古屋のイチビキ・天然醸造。
味噌は須坂の中村醸造場・まるゆき味噌甘口。
ついでに日本酒は西宮市の大関・のものもである。
醤油漬けは数時間後には食べられ、
味噌漬けのほうは数日置いて焼くのである。

一仕事片付けたその夜、食卓に並んだのは
自分でチャチャッと作った冷奴にしらすおろし。
「ローマイヤ」で買った3品とくだんの縞あじ醤油焼き。
あとは全粒粉のイングリッシュマフィン・トーストに
バターをたっぷり塗ってシュニッツレルの合いの手に。

奴としらすおろしはいつもと変わらぬ味。
この2品にデキ・不デキなどない。
縞あじは小骨の多さに難渋したものの、
素材・味付け・焼き上がり、すべてバッチリ。
問題は“ローマイヤ三兄弟”であった。
美味少量を目論み、少しずつ購入したのだが
それが仇となってしまう悲しい喜劇の勃発である。

コールスローは固い外葉(がいよう)ばかりで
しかも味付けにまったくキレがない。
香草・ヴィネガーともに役割を全うしていない。
マカロニサラダもまたしかりで凡庸そのもの。
万人受け狙いのため、薄味仕上げに徹していて
もしも塩味や酸味や香りが足りなかったら
「ご自分でご自由にどうぞ」のスタンスを貫いているのだろう。
とはいってもこの仕上がりでは製造責任者の味覚を疑う。

最悪だったのが仔牛のシュニッツレル。
元来、シュニッツレルはオーストリアが本場の薄いカツレツ。
それにしても限度というものがある。
仔牛肉は超薄切りでそれをはさむ両サイドのコロモは
それぞれに仔牛の1.5倍はあった。
ケチ臭いパン屋のハムカツサンドさながらなのだ。
たぶん525円だったと記憶するが
適正価格は315円がいいところ。
創業者のアウグスト・ローマイヤ氏も
草葉の陰で泣いていることだろう。
現経営陣は猛省したうえで即刻、善処してほしい。

 
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2010年8月20日(金)

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