第1078回
のんびり ゆっくり 夏休み(その1)
今年の夏休みは2泊3日の小旅行。
訪れたのは、津・奈良・京都の街々である。
日曜の明け方に発ち、火曜の夜遅くに帰って来た。
行き帰りともに飛行機や新幹線を使わず、
のんびりと、ゆっくりと、列車の旅を楽しんだのだ。
それではいざ、シュッパア〜ツ!
午前4時過ぎに家を出て
品川発小田原行きの普通列車に乗り込んだのは5時前。
以後、小田原・熱海・浜松・豊橋・名古屋でその都度乗り換え、
三重県の県庁所在地・津に到着したときには正午を回っていた。
灼熱の太陽の下、テクテク歩いて目指したのは「大森屋本店」。
 |
この佇まいに惹かれた
photo by J.C.Okazawa
|
ちょっと見は浅草のすき焼き屋「米久」に似てないこともない。
炎天下を20分も歩いて汗はダクダク、のどはカラカラ、
とにかく真っ先に冷えたビール、ビール、ビールをおくれ!
運ばれたキリンラガー大瓶をトクトクのプファ〜ッ!
この旨さたるや、もう何物にも代えがたい。
好みの銘柄もへったくれもあったものではありやせん。
つまみとして日替わり定食のおかずだけを所望。
 |
海老フライとオムレツの盛合わせ
photo by J.C.Okazawa
|
名物は中華そばと聞き及ぶが、この暑さじゃ食指が動かん。
一息つき、過去に食べたことのない木の葉丼を
注文してみようという気になった。
旅の恥はかき捨て、ではなく
旅先のちょいとした気まぐれである。
木の葉の贋札で人を化かす狐にちなみ、
木の葉丼の具材に油揚げを使うことは知っている。
知ってはいるが、実際に1度も食べていない。
ありがたかったのは小丼があったことで
迷わずミニ木の葉丼を追加注文した。
 |
油揚げよりかまぼこが目立つ木の葉丼
photo by J.C.Okazawa
|
玉子でとじてあるので親子丼とそう大差がない。
味のほうはまあそれなりだったけれど、
とにかくこの店の暖簾をくぐってみたかったのだ。
昼食後、近所をぶらついてさびれた大門商店街に行き着く。
 |
人っ子一人いないと思ったら自転車がやって来た
photo by J.C.Okazawa
|
なんでこんな商店街がいまだに残っているのか不思議だ。
日曜だから閉まっているのか、
あるいは明るいうちだからなのか、判然としなかった。
アーケードの中ほどを折れると、飲み屋街が現れる。
 |
飲み屋のラビリンスが津にあった
photo by J.C.Okazawa
|
タクシーで津駅に戻り、亀山・加茂を経て奈良へ。
駅前のホテルにインしたのが16時半。
丸12時間かけて東京―奈良を移動したことになる。
途中、豊橋の駅周辺を散策し、津ではランチを取ったから
直行すれば10時間は切るだろう。
夏の日のことで陽はまだ高い。
歩けばまた汗まみれになることは必定、
シャワーも浴びずにそのまま外出。
さすがに奈良の街には奈良漬を商う店舗が多い。
ほんの数分で汗は噴き出し、のどはビールを求め始めた。
コンビニで缶ビールとプラコップを買い、
猿沢池のほとりで飲む。
何の変哲もない池ながら、そこは古都・奈良のこと、
悠久の歴史が訪れるよそ者を温かく迎えてくれる。
大仏殿はすでに閉まっていようが、足を向けたのは東大寺。
ほどなく鹿の群れと遭遇した。
 |
カメラを向けたらシカトされた
photo by J.C.Okazawa
|
奈良のお寺は立派だが鹿たちが実によい。
何てったって街に溶け込み人に親しむ、彼らの自然体がいい。
奈良の鹿みたいな生き物は世界でも珍しいのではないか。
ピラミッドのふもとの駱駝(らくだ)とは意味が違うもの。
=つづく=
【本日の店舗紹介】
「大森屋本店」
三重県津市大門23-4
059-228-2761
|