第1082回
のんびり ゆっくり 夏休み(その5)
夕べあんなに飲んだのに二日酔いもなく、
朝はスッキリ目覚めて朝食に出掛けた。
烏丸通を南下してゆくと蝉しぐれが耳に痛い。
東京のアブラゼミとは鳴き声がまったく異なっている。
並木を見上げれば声の主は
こぞって透明な翅(はね)を持っていた。
ミンミンゼミともツクツクホウシとも違うから
おそらくクマゼミだろうな、あれは。
そう言えば、奈良のセミも東京・京都と異なって
確かめてみたら小型のニイニイゼミだった。
所変わればセミ変わる、なのですね。
目指したのは京都の中央卸売市場である。
市場の朝めしは至上の喜びなのである。
やって来たのは「石田食堂」。
食堂とは名ばかりでメニューはこれだけだ。
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ほとんどの客が焼半ラーメンを注文
photo by J.C.Okazawa
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オバちゃん2人の切り盛りながら
ここのラーメンは仕入れに来る板前の間でも評判らしい。
飛ぶ鳥を落とす勢いの祇園「さゝ木」の大将も
このラーメンのシンパだと、どこかで聞いた。
築地場内の食堂のように立て混んではいない。
数人の先客は揃ってのんびりとしたものだ。
みんなが食べてる、あるいは待ってる焼半ラーメンと
ビールの小瓶をお願いした。
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焼半は半チャーハンのこと
photo by J.C.Okazawa
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東京人の言う半チャンである。
量は少なくとも侮れないおいしさだった。
ラーメンにはチャーシューと青ねぎがタップリ。
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築地場外「井上」に似ていないこともない
photo by J.C.Okazawa
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「井上」はももチャーシュー主体だが
ここのはバラチャーシューが5枚。
細めの麺には粉々感とシコシコ感が共存している。
すばらしいのはスープで
化調を感じさせずに穏やかなコクがある。
京都ではめったにラーメンを食べないけれど、
この一杯は京都随一と言い切りたいほどのもの。
ラーメンで一汗かき、外へ出れば体感温度は楽に35度。
一度引いた汗がまたドッと噴き出す。
♪ 京の暑さはツラかった あとは麦酒をあおるだけ ♪
次に訪れたのは「イノダコーヒ本店」。
ここでやるブランチがまたけっこうなのだ。
さっそく麦酒を所望して定番「京の朝食」を待つ。
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ミックスナッツとナプキンが添えられる
photo by J.C.Okazawa
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ナッツまで付いてコーヒーと同値の530円は
実質、コーヒーより安いわけでこういう店は世に少ない。
可愛いウエイトレスによって見慣れたプレートが運ばれた。
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ガルニの温野菜がありがたい「京の朝食」
photo by J.C.Okazawa
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1200円と値が張るものの、充実の一皿である。
卸売市場の半焼ラーメンを食べているので
「京の朝食」と合わせれば、本日は昼食抜きが望ましい。
というより、もう食えんやろ。
京に残すところは最後の錦小路散策。
東京に買って帰るものを物色するのだ。
「イノダコーヒ本店」から徒歩数分の錦に向かった。
=つづく=
【本日の店舗紹介】その1
「石田食堂」
京都府京都市下京区朱雀分木町80中央卸売市場11号棟
075-311-5288
【本日の店舗紹介】その2
「イノダコーヒ本店」
京都府京都市中京区堺町通三条下る道祐町140
075-221-0507
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