「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第1083回
のんびり ゆっくり 夏休み(その6)

前日に錦小路を訪れたのは夕刻だった。
この日は午前中で営業中の店舗が前日より多い。
活気の戻った小路を一往復してみたものの、
これといってめぼしいものは見つからない。
買い求めたのは京野菜を商う「かね松」で
京ささげ・京の昔トマト・山科唐辛子のみ。

東京へ持ち帰るものではないが
「麩嘉」の店頭で販売していたかき氷に惹かれた。
なぜに麩屋がかき氷を売っているのか判らない。
何でも数年前に初めて評判がく、以来続けているらしい。
“熊笹の蜜の井戸水かき氷”の貼り紙が
通りすがりの客を惹きつける。
これが1杯200円では試したくなるのも人情だ。

で、買ってみました、熊笹蜜のかき氷。
写真に撮るのは至難の業なのでスナップは割愛。
浅草はひさご通り「初音屋」のそれに似て
新雪のように軽やかなかき氷だった。
熊笹の蜜もどんなものかイメージがわかないが
あっさりとした甘みに舌が好感を抱いたのは確か。

京都発長浜行きの新快速に乗り込んで帰宅の途に。
米原で大垣行きに乗り換え、
大垣では豊橋行きに乗り換え、
豊橋で浜松行きに乗り換え、
浜松では興津行きに乗り換え、
島田で熱海行きに乗り換えて
東京に帰るわけである。

松本清張の推理小説「点と線」の主人公、
鳥飼刑事か三原警部補にでもなった気分である。
それでも快速やら新快速があるぶん、
昭和30年代初頭よりはずっと楽な汽車の旅だ。

東京に着いて晩めしというのは、いささか芸がない。
なるべく東京から離れた街で食べたいが
豊橋・浜松・静岡ではまだ時間的に早すぎる。
となると、沼津・三島・熱海あたりが狙い目だ。
電車の乗り継ぎを考慮すると、熱海が一番都合がよい。
加えて熱海には前々から気になっている店がある。

で、降りてみました、熱海駅。
駅前のアーケードを突っ切り、
海岸へ続いてゆく坂を下り始めてほどなく、
右側にその店「ひらり」はあった。
かつて店の前を何度も通り掛かったことがある。
喫茶店のようであり、小料理屋のようでもあり、
和洋折衷の創作料理屋風かと思えば、
スナックに見えぬこともない、身元不明の店だ。

先客は女性が2人。
出勤前のホステスさん、いやママかな?
それに美容院の経営者風のオバさんである。
カウンターのみの店内は喫茶店か
バーの居抜きといった匂いがプンプン。
独りで切り盛りしているママに訊くと
5年ほど前に東京から移って来たという。
熱海では新参者につき、主だったお客は
東京から熱海の別荘にやって来る小金持ちとのこと。

馬刺しの盛合わせがよくもこんな場所(失礼!)で
こんなに立派な馬肉が! というほどのもの。

ロース・タテガミ・フエタゴの盛合わせ
photo by J.C.Okazawa

フエタゴというのは馬のアバラとか横腹とかいわれ、
まあ、牛でいうところのカルビですな。
白海老の昆布〆は他店でも見掛ける富山名物の出来合い品。
さんまの三五八漬けも既製品のようだが
塩焼きとは一味違ったおいしさがある。

塩3:麹5:米8の床に漬けられた三五八漬け
photo by J.C.Okazawa

結局、手造りの料理は突き出しのかぼちゃ煮付けと
茄子&ピーマンの炒め煮だけながら
中華料理以外はレベルの低い熱海にあって
訪れて後悔しない1軒ではあろう。
下心ある男が独りで立ち寄るにはオススメかもしれない。
そんな出会いをママが待ってるわけではないけれど・・・。

              =おわり=


【本日の店舗紹介】その1
「麩嘉 錦市場店」
 京都府京都市中京区錦小路通堺町角
 075−221−4533

【本日の店舗紹介】その2
「ひらり」
 静岡県熱海市咲見町12-6
 0557-82-0631

 
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2010年8月30日(月)

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