第1081回
のんびり ゆっくり 夏休み(その4)
前代未聞の天丼クンの奇襲を受けたあとは
三条烏丸近くのホテルにチェックイン。
シャワーを浴びてベッドに横たわったら
たちまちうたた寝である。
小1時間まどろんだのち、まだ暑い中を街に出た。
最初に向かったのは錦小路。
京都に来ると必ず訪れるのがここ。
京の都で好きなスポットはこの細い商店街と賀茂の流れである。
とは言っても年々、錦小路から魅力が失われてゆくのを感じる。
以前はもっと小路独特の匂いや色合いが強かったはずだ。
夜は「ぎをん や満文 青木庵」に予約を入れてある。
少々時間が空き、のどが渇いてもきたし、
取りあえずビールの“給油”が急務となった。
ここで突然、思い出したのが1軒のビヤホールだ。
38年前に1度だけ訪れたその店は「ミュンヘン」。
当夜のことはよく覚えている。
現在ストックホルムにいる高校の同級生、
S水クン(第730回参照)と一緒で
1972年9月8日のことだった。
なぜ鮮明に覚えているのかというと、
その深夜、ミュンヘン五輪男子バレー準決勝、
日本VSブルガリア戦があったからだ。
0−2から3セット連取した日本の逆転劇は
今もなお、語り草になっている。
そう、ミュンヘン五輪の開催中に
ビヤホール「ミュンヘン」で飲んだのだった。
当時と同じ場所に「ミュンヘン」はあった。
創業58年は現存する京都最古のビヤホールではないか。
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看板やサンプルケースは改装されたような・・・
photo by J.C.Okazawa
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生ビールの銘柄はアサヒ、中ジョッキを所望すると
ポップコーンが添えられてきた。
「イノダコーヒ」でもそうだったし、
京都でビールを頼むと軽いつまみを出してくれる店が多い。
東京でも柿ピーを出すところがないことはないけれど。
四条大橋を渡りながら賀茂川の川面に目をこらすと、
けっこうなサイズの真鯉がウジャウジャ泳いでいる。
遠くの川岸ではコサギやアオサギがサカナを狙っていた。
「青木庵」は古い町家である。
もっともこの建物は店舗におもきをおいているから
“町屋”と記すほうが正しいかもしれない。
ちょっと歩いただけでのどが渇き、再びビールだ。
食事の進行とともに白鹿超辛の燗、
芋焼酎・前田利衛門のロックへと移行する。
葵と名づけられた4000円のコースにプラスして
アラカルトの甘鯛かぶと焼きをいただいた。
庶民的な価格設定がありがたい。
ほかに時代(3000円)、祇園(5000円)、
舞妓(6000〜1万円)などのコースが揃っている。
葵の内容は、ひしこいわし煮付け、まながつお南蛮漬け、
長茄子焼きびたしw/おろし生姜、真だこ桜煮、
もずく酢、お造り(真鯛・鱧落とし)、
賀茂茄子煮びたしw/紅葉おろし&花がつお、
にぎり鮨(きす焼き霜・するめいか・海胆軍艦)である。
アラカルトの甘鯛はお造りのあとに供され、
にぎりの前にはそのかぶとを使った長ねぎと豆腐のお椀も。
暗くて映りが悪いが数品の写真を。
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ひしこいわし煮付け
photo by J.C.Okazawa
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甘鯛かぶと焼き
photo by J.C.Okazawa
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早松茸土瓶蒸し
photo by J.C.Okazawa
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東京人が喜べないにぎりはいかにも余計で
代わりに鯖と鱧の棒ずしが1切れずつほしかった。
お造りの混ぜわさびも残念無念。
京都は生わさびの普及度が低い土地柄のようだ。
ホテルに帰る前に寺町の「京都サンボア」へ。
このバーを愛した池波正太郎翁を偲び、
彼が好きだったペルノーの水割りをまず2杯。
アサヒの小瓶をはさみ、仕上げはホワイトレディ。
何だかんだと、また飲み過ぎの甘い京都の夜でした。
=つづく=
【本日の店舗紹介】その1
「ミュンヘン」
京都府京都市中京区河原町通四条上ル一筋目東入ル
075-221-3917
【本日の店舗紹介】その2
「ぎをん や満文 青木庵」
京都府京都市東山区祇園町南側570-125
075-533-3811
【本日の店舗紹介】その3
「京都サンボア」
京都府京都市中京区寺町通三条下ル桜之町406
075-221-2811
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