第1088回
かつお刺しと牛レバ刺し
阿部定事件の舞台となった荒川区・尾久は
東尾久と西尾久に二分され、
かなり広い地域にまたがっている。
そば屋「朝日屋」や尾久八幡神社のある宮ノ前から
都電・荒川線で1つ隣りの小台に徒歩で移動した。
以前は公共の交通機関を使ってこの辺に来るには
荒川線に頼るしかなかったが
現在は舎人ライナーが開通してずっと便利になっている。
近くの隅田川河岸には、エッ、これが東京の遊園地?
と、思わず目が点になる荒川遊園地もあったりして
実にのどかな土地柄だ。
その夜の相方、上海帰りのT島クンに案内されたのは
「美国屋」という名の居酒屋風和食店。
日本橋高島屋脇にあるうなぎ屋と同じ屋号である。
美国というのは中国語なら米国のことだ。
相方によれば何でも前日初めて訪れて
牛レバ刺しのあまりの旨さに魅せられ、2日連荘だという。
いくら美味でもレバ刺しなど、
立て続けに食うものではないと思うが
とにかくそれほどに旨いらしい。
若い頃に北海道の「美国屋」で修業したという店主は
暖簾分けのカタチで屋号を譲り受けたとのこと。
となると自慢の料理は
北海道直送の魚貝類に偏るのだろうか。
壁にブラ下がったホワイトボードから
主だったメニューを抜き書きしてみよう。
盛合わせ刺し(まぐろ・天然真鯛) |
1400円
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サーロインステーキ |
1400円
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旬 かつお刺し(勝浦) |
950円
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特大あじ塩焼き(淡路島) |
850円
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新とうもろこし(山梨) |
500円
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新玉ねぎさつま揚げ |
400円
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もつ焼き(レバ・シロ・カシラ) |
各400円
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ざっとこんな具合で別段、道産モノが目立つわけでもない。
レバ刺しは数が少ないためにボードには記されず、
代わりにサーロインステーキが書き込まれている。
和食中心、しかも魚貝がウリの店でサーロインとは
よほどの自信の表れだろう。
牛肉が北海道産なのかもしれない。
突き出しのポテトオムレツは
スペインバルのトルティーヤのよう。
サウザンアイランド・ドレッシングみたいな
甘いマヨネーズソースが掛かっている。
いろんなことを試す料理人なのだろう。
レバ刺しは必食ながら、その前にかつおである。
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小ねぎを散らした勝浦のかつお
photo by J.C.Okazawa
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血合いが多いように見受けるものの、
このクラスの店(どんなクラスだ?)としては
水準をクリアしている。
生姜でも食べたが、やはり生にんにくのスライスが一番だ。
もつ焼き(豚)のカシラをはさんでいよいよ牛レバ刺し。
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エッジの立った切り口が鮮度の高さを証明
photo by J.C.Okazawa
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これもにんにくのスライスでいただく。
1切れ食しての感想は、なかなかのものながら
三河島のリトル・コリアに行けば、
このレベルに苦もなく出会えそうな気がする。
それよりも小台の町で酒を飲むのは初めてのこと。
その事実のほうにささやかな感慨を覚えた夜だった。
【本日の店舗紹介】その1
「美国屋」
東京都荒川区西尾久3-16-9
03-3800-1021
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