「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第1095回
かつてこの町は池袋より栄えていた(その1)

年配者なら誰しも、いや、若者でも1度や2度は
三業地という言葉を耳にしたことがあるだろう。
料亭・待合・芸妓置屋、以上三業の営みが
認可された地域のことで花柳界ともいわれ、
花街と呼ばれたりもする。
遊郭を始めとする色里も花街だが
三業地もまた花街なのである。

城北地区随一の繁華街は池袋。
JR山手線で1つ北隣りに位置するのが大塚だ。
お婆ちゃんの原宿こと巣鴨は大塚のまた1つ先。
関東大震災の前年に生まれた大塚三業地は
震災後にいちじるしい復興を遂げて
昭和の初めには都内有数の隆盛を極めた。
今やとてつもない大都会に膨らんだ池袋を
圧倒するくらいの繁栄を誇っていたのである。

現在でも大塚を歩いていると、
町のそこかしこに往時の残り火が
くすぶっている匂いを嗅ぐことができる。
山手線の他の駅とは明らかに違う空気が流れている。
J.C.が好きな都内の街は
 一に浅草 二に銀座 三、四がなくて 五に神楽坂
と、心に決めてはいるものの、
最近はもっと小さな町を好む傾向が芽生えている。
街に飽きて町に目覚めたと言い換えてもよい。

したがって大塚で飲む機会は多い。
大の気に入り店は2軒。
姿勢を正し、キリッと飲むときは「江戸一」。
銘酒・佳肴が揃う都内屈指の酒亭である。
寛いでボケッと飲むときは「富久晴」。
炭火で焼かれる小ぶりな焼きとんが旨い。

ここ1〜2ヶ月、ずいぶんご無沙汰している店や
いまだ未踏の店を意識的に訪問している。
さして広くもない大塚なのに新発見が次から次へと、
それは、それは楽しい行脚となった。
そのうちの何軒かを紹介したい。

新大塚や池袋にも姉妹店のある「ABC北大塚店」。
都内の洋食店の中では古株である。
安くてボリュームがあるので
若者の支持を集めるのは当然ながら
オジさんにも根強いファンが多い。
評判は耳に届いていたから
いつか来ようと思いつつも果たせないでいた。

夕刻17時前、中休みがないのをこれ幸いと入店。
単品の軽いつまみが揃っていて
これならハシゴ酒の1軒目として最適だ。
ビール大瓶が500円、フライ各種は150円、つまみ類が180円。
何とまあ、使い勝手のよいことよ。
注文はビール、メンチカツ&チキンカツ、ほうれん草ソテー。
締めて980円也である。

この1皿が300円ってどうよ?
photo by J.C.Okazawa

これじゃ下町の大衆酒場も真っ青だ。
味も水準に達している。
サイドオーダーのほうれん草のおかげで
ビタミンと食物繊維もバッチリ。
満足の好スタートを切ったのである。

           =つづく=


【本日の店舗紹介】
「ABC北大塚店」
 東京都豊島区北大塚1-14-9
 03-3915-1512

 
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2010年9月15日(水)

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