第1099回
廃墟の猫(その2)
茨城県の県庁所在地・水戸に来ている。
廃墟となった鉄筋アパートの駐車スペースで
3匹の猫たちと相対している。
加橋かつみがリードヴォーカルを担当した
タイガースの「廃墟の鳩」は懐かしい曲だが
猫たちのために「廃墟の猫」でも作詞してみようか、
そう思わせるほどに可愛いやつらなのだ。
それが一様に空腹を抱えている様子。
今夜、飲む店を決めあぐねているというのに
厄介な連中を背負い込んだものである。
仕方なく立ち去ったものの、やはり気になって仕方がない。
で、探してみました。
エッ、何を探したんだ! ってか?
コンビニかスーパーに決まってるじゃないッスか。
で、ほどなく見つけました、うらぶれたスーパーを。
そこで買ったのはツナ缶1個。
本当は3個買うべきところ、時間が経っていることだし、
はたして彼らがまだそこにいるかどうかも定かではない。
で、急ぎ足で戻ると、いました、いました、廃墟の猫。
やはり真っ先に近寄って来たのは姉のほう。
続いてチビの妹もようやくバンの下から抜け出て来た。
母猫も娘2匹の食事風景につられ、おもむろに着地だ。
 |
3匹仲良く1缶をシェア
photo by J.C.Okazawa
|
いやァ、心が和みますなァ。
と、こんなことをしている場合ではない。
「大利根無情」の平手造酒さながらに
♪ 見てはいけない 西空見れば
江戸へ 江戸へひと刷毛 あかね雲 ♪
 |
落ちる夕陽が目に痛い
photo by J.C.Okazawa
|
連中に別れを告げて大工町の交差点に立ち戻る。
あとは黄門さん通りを行ったり来たり。
こんなマネは本当に好きでなきゃ、やってられない。
あちこちさまよい、何でここにあるのか
理解に苦しむ「京成百貨店」の地下へ潜った。
あとで判ったのだが水戸の買い物客を二分したかつての百貨店、
「伊勢甚」と「志満津」が立ちゆかなくなったとき、
これを支援、吸収したのが前者は「ジャスコ」、
後者が「京成」という経緯があったのだ。
4年半前に開業した「京成百貨店」の食料品売り場は
鮮魚・精肉に至るまで「柿安」が実行支配していた。
地方に来ると、デパ地下の鮮魚を必ずチェックするのは
売り場にローカル色があふれているからだ。
ところがここにそんな気配はなかった。
大洗や霞ヶ浦が控えているのに、あまり個性が出ていない。
珍しかったのはナガス鯨の刺身と粒の大きさにかけては
おそらく日本一と思われるサロマ湖のしじみだけである。
「京成百貨店」近辺の黄門さん通りは
シャッターを閉ざしている店舗も数多く、
寂れに寂れているというのが現状だった。
少々焦りを見せながら黄門さん通りをなおも歩くと
妙なポスターに目がとまった。
あのホリエモンが10月に県民文化センターで講演するという。
それもチケットが2500円で、しかもポスターには
「当日は相当な混雑が予想されます。
お車でお越しの際はお早めのご来場をお願いします」
とあった。
おい、おい、ホントかよ、何をしゃべるのか知らないが
ホリエモンの講演で相当な混雑が予想されるとは!
茨城県民、並びに水戸市民には申し訳ないが
ちょっと民度が疑われるというものですぜ。
そんなことはどうでもいい。
三たび大工町に戻り、今宵の止まり木を物色するJ.C.であった。
|