第1104回
天ぷらそば始末記(その2)
真夏に汗みどろで食べ歩いた“天ぷらそば始末記”。
第2弾は根津神社にほど近い「よし房 凛」である。
うどんの佳店「根の津」のすぐそばだが
うどんとそばは競合しないらしい。
ともに行列ができて繁盛している。
実は「週刊現代」のミッションには
値段の上限が設定されていて1500円。
30〜50年代のサラリーマン諸氏を
メインの読者層としている事情から
あまり高額の天ぷらそばでは
番付を作成しても実用性に乏しくなるのだ。
「よし房 凛」の天ぷらそばは1600円。
予算オーバーだったが、ここに救世主が現れた。
その名もごぼ天そば、金千円也である。
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拍子木切りのごぼ天がたっぷり
photo by J.C.Okazawa
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海老天とは一味違う野趣を味わう。
ここのかけそばにはごぼうがシックリくる。
打ち台の隣りの席だったので
そば打ちの様子をつぶさに観察できた。
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工程はそば打ちを終えてそば切りに
photo by J.C.Okazawa
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十数人しか入れぬ小体な店だが
手打ちで客を迎えるにはこれで目一杯とみえる。
根津神社の参詣客でにぎわうのに
食べもの屋がさほど多いとはいえない根津の町。
キャパの小さな店に行列が絶えぬのもむべなるかな。
第3弾はめったに行く機会のない新小岩にある「旭庵」。
正式には「旭庵手打そば店」を名乗る老舗だ。
看板に偽りなく、ここも手打ちそばを供する店である。
天ぷらそばは車海老2尾付きで1890円。
またもや上限を超えてしまうが
海老1尾&野菜天の割安版が1420円。
このエコノミークラスに救われた。
迷わずそれをお願い、というよりほかに選択肢がない。
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天ぷらは別盛りで運ばれる
photo by J.C.Okazawa
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この環境下では真っ先にそばに箸をつけなければいけない。
天ぷらが冷めるより、そばがノビては一大事だからだ。
ご覧のように細打ちのそばはそこそこのコシを蓄え、
最低限の甘みを残したつゆが上品な仕上がりで旨し。
始末記の最後を飾る第4弾は「小倉庵」。
旧三業地・大塚の庶民的なそば屋さんだ。
メニューが実に豊富で、晩酌に訪れるのも一興である。
庶民派らしく天ぷらそばは破格の800円、
のはずなのだが、平日ランチタイムの恩恵か750円だった。
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これぞ昔ながらの天ぷらそば
photo by J.C.Okazawa
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チリチリとしたコロモの付きがよく、
ナルトと青味が脇役の務めを果たしている。
これで青味が小松菜ではなく、ほうれん草だったら文句ナシ。
緑色を帯びたそばは終いまでコシを失わず、
町場にしては甘さ控えめのつゆがアッサリ味。
たっぷりと添えられた刻みねぎもまさしく町場風。
古く良かしき匂いを残す「小倉庵」を
「うまいもの番付」では大関にランクさせてもらった。
【本日の店舗紹介】その1
「よし房 凛」
東京都文京区根津2-36-1
03-3823-8454
【本日の店舗紹介】その2
「旭庵手打そば店」
東京都葛飾区西新小岩4-42-14
03-3692-0123
【本日の店舗紹介】その3
「小倉庵」
東京都豊島区南大塚2-40-10
03-3942-1314
注:くれぐれも北大塚の同名店とお間違えなきよう |