「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第1113回
つけ麺に異議あり!

朝はともかくとして、昼に夜に真夜中に
日本でもっともポピュラーな食べものは
間違いなくラーメンだろう。
もちろん白飯はもっと食されていようが
ライス単体では食事の態をなさない。
梅干しや納豆や玉子焼きや焼き魚や
コロッケやハンバーグやカレーが
あってこそのごはんであろう。

しっかし、よくもまあラーメンが
日本全国を席巻しつくしたものだと思う。
日清のチキンラーメンはべつとして、子どもの頃、
子どもだから札幌や博多の事情は知らんけど、
ラーメンにせよ、中華そばにせよ、
醤油味のスープに多少ちぢれた麺が入り、
その上にはたった1切れの薄い焼き豚、
パラパラッと4〜5本のシナチク、
鳴門海峡のごとくに渦を巻いたナルト、
そして緑一点のほうれん草が整然と並んでいた。
この景色を肉眼で確認し、脳がそれに呼応して
さあ、ラーメンを食えよと身体の各器官に命令を下す。
ここで初めて胃袋がグウ〜ッと鳴り、
同時に割り箸もパキッと鳴るわけだ。

それが今はどうだろう、各地からご当地ラーメンとやらが
花の東京に乗り込んで来ている。
ナルトはともかくもほうれん草なんざ、
めったにお目に掛かれなくなってしまった。
たとえ青みがなくったって
豚骨だろうが味噌だろうが、スープの張られたどんぶりに
細かろうが太かろうが、麺が泳いでるぶんにはまだ許せる。
しかしながら、わが世の春とばかりに
日本全土を侵食したつけ麺って
ありゃいったい何じゃらほい?
1年に数えるほどしか口にしない身ながら
今までただの1度も旨いと思ったことはない。

以前、「めしとも」のO編集長とつけ麺の話題になったとき、
彼もアンチつけ麺派であると知り、何だかホッとした。
こういう場面で同好の士を得るのはうれしい。
それが少数派であったときはひとしおだ。

人気店の行列を見るにつけ麺、もとい、見るにつけ、
客の年齢層があまりに若く、
この食いものは若者限定なのかと強く感じた。
第一、あの麺の量は尋常じゃありやせんぜ。
昼にあれを完食しちまったらもう晩メシは食えやせんぜ。
同じ店で食べるラーメンはほぼ世間並みの量なのに
なんでつけ麺になるとボリュームがアップするのかね。
日本そば屋のもりそばとかけそばだって同量じゃないの。

それにあのつけ汁は何のつもりだろうか?
甘ったるかったり、妙に酸っぱかたり、
はたまたモロに“化学の子”だったり。
おまけに魚粉まみれで複雑きわまりない異様な味。
そもそも魚粉なんてのは畑の肥料じゃないか。
言っちゃあ悪いが人糞の代用品でしょうに。
あんなモンに行列作るんだったらバイトに行きなさいよ。

今の若者は味より量に目がくらんでいるのか、
あるいはコンビニ食に犯されて味覚が破壊されてしまったのか、
将来、彼らが自分で稼ぐようになり、
鮨でもステーキでも自由に食べられるようになったとき、
はたして本物の味の見極めができるのだろうか?
彼らの行く末を心から憂うものであります。

 
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2010年10月11日(月)

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