「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第1120回
愛しのシャーリー&オードリー

わが半生において、もっとも映画を観た時期は
中学2年から高校2年までの4年間。
池袋のデパート内にあった東武ムービーシアター。
毎月、伯母から招待券をもらえた池袋劇場。
あとはテアトル池袋に文芸座と文芸地下。
高田馬場パール座に新宿地球座とシネマ新宿。
本当にお世話になりました。

当時はアメリカよりフランスやイタリア映画に惹かれた。
スクリーンに流れるパリ・ローマの街並みや
大西洋・地中海の港・浜辺の情景もさることながら
哀愁を帯びたテーマ音楽に因るところが大きい。
アメリカにはない哀愁が欧州にはあったのだった。

好きな女優もイタリア人のステファニア・サンドレッリと
クラウディア・カルディナーレが双璧だったが
アメリカのオードリー・ヘップバーンと
シャーリー・マクレーンのファンでもあった。
つい先日、2人が唯一共演した「噂の二人」のDVDを観た。
およそ40年ぶりのことである。
驚いたのはオードリーのあまりの美しさに
すごく可愛いと思っていたシャーリーが
ごく普通の女性に見えてしまったこと。
あわててその後、シャーリー主演の「ハリーの災難」、
「アパートの鍵貸します」を立て続けに観直すと、
やはり彼女はものすごく可愛いのである。

このコラムの読者に若い女性はまれだろう。
それでも敢えて進言。
もしも貴方がご自身をそこそこ美しいと思っている場合、
絶世の美女のお友だちとはあまり同席しないほうがよろしい。
殊に意中の男性が参加する食事会や飲み会は厳禁だ。
昔から言われていることだから皆さん百も承知だろうけど、
あらためて肝に銘じていただきたい。
J.C.がこのことを強く実感したのは
今回の「噂の二人」が初めての経験。
それほどにオードリーの美貌は人間離れしていた。

つくづく男は女以上に目移りする生き物だと思う。
もはや目移りよりも
目漁(めあさ)りと言うほうが当たっている。
今はそれぞれ誰かのお嫁さんになっていると思われる3人組、
Mi-Keが歌った「想い出の九十九里浜」の歌詞を思い出した。
 ♪ 貴方の視線がどこを 見てるかを見てた私 ♪
世の娘さん、これってほんとに大事なことですよ。

今回はあまり「食べる歓び」してないので
表題の2人にまつわる食シーンをお届け。
オードリーは何といってもアイスクリームである。
「ローマの休日」でジェラートなめなめ、
スペイン階段を降りてきたかと思えば、
「シャレード」ではケーリー・グラントの上着に
アイスをベッタリくっつけちゃったりもしている。
冷たいタイプの美人女優には似合わない1コマで
アイスクリームの小道具が
オードリーの愛らしさをいっそう引き立てるのである。

一方のシャーリーは「アパートの鍵貸します」が忘れられない。
しがない保険会社のエレベーターガールの彼女、
今宵こそはキッパリ別れるつもりで
不倫相手の上司との逢瀬にやって来た中華料理店。
小海老のフリッターを指でつまみ、
甘いソースを付けて口元に運び、つぶやく。
「この海老、味がオチたわ」――努めて明るく振舞いつつも
砂を噛むような思いで海老を噛んでいるのだ。
彼女の前にはいつも愛飲しているフローズン・ダイキリがある。
半世紀前のエレベーターガールが
凍らせたダイキリを飲むんだから
やっぱりニューヨークはオサレな街ざんす。

 
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2010年10月20日(水)

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