「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第1121回
家元のおっしゃる通り!

部屋の片隅から「週刊現代」の9月25日号が出てきた。
「うまいもの番付」で天ぷらそばを担当した号だ。
サッと目を通したあと、読むのをコロリと忘れていた。
立川談志の時事放談「いや、はや、ドーモ」がいつも楽しい。
とりわけこの号の「自転車について」は格別であった。
ハナシが長いので中略を勝手にはさませてもらいながら
ダイジェストで引用させていただく。
家元(談志師匠は自身をそう呼ぶ)、無断転載をお許しください。

自転車は街のガンだ。危なくって仕様がねぇ。
こちとら乗らないせいもあるが、道ィ歩いてとにかく邪魔だ。
車だから本来は車道を走るべきなのにご存知の如く
どけどけと云わんばかりに歩行者を除(ど)かせる。
よく街を歩るく(ママ)立川談志にとっちゃ堪らない。
曰ク迷惑千万でもあるし、家元わざと
“除(よ)けろ”といわんばかりに自転車に道を譲らない。
“当ってみやがれこん畜生”ってなもんだ。
“邪魔だよ”なんて云おうもんなら、さァこっちのもんだ。
延々と自転車のルールの講釈を喋る。もし相手が
“何だい談志さんぢゃあないか。相変わらず騒(うる)さいね”
と苦笑の挙句、“身体ぁ元気そうですが、よくなりましたか”
“まァネ”と話せば芸人とファンの関係になっちまう。
ま、ほほえましいといやぁそれまでだが。

余談だが新宿の繁華街に住んでた頃だ。
子供が自転車を買って欲しいといった。
親の俺は断固断った。危ないからだ。
僕はキチンとしてるから大丈夫、にお前はキチンとしてても
世の中にゃ馬鹿が一杯だから駄目。
どうしても自転車は買ってやらなかった。
もう一人前の社会人だが、このガキは自転車に乗れない。

とに角キケン、危ないよ。たとえ轢かれたって記事にもならない。
どれほどの自転車事故が全国で起きているのか、
物凄い数だと思うよ。
何しろ銀座の通りまで自転車で走っている奴のいる世の中である。

まさしく家元のおっしゃる通り。
かく言うJ.C.も自転車には道を譲らない。
チリンチリン鳴らして来やがる無頼漢には
“急ぐんだったっら、車道を走んなさいよ”とほざいてやる。
坂道をうしろから猛スピードで駆け下りて来る奴なんかは
追い越される瞬間に狙いを定めてサッカーでならした、
ショルダーチャージをかけてやろうかと思うくらいだ。
ハズミがついてるから敵は宙をブッ飛ぶこと必至、
まあ、五体無事じゃ済まないやネ。
こんなアルカイーダ的発想が浮かぶくらいに自転車を怨んでる。

家元が嘆くように自転車でノコノコ銀座に来るタコは
一刻も早く東京から出て行ってもらいたい。
あの無節操、無作法はクスリのつけようがなく、
皇居の一般参賀に歯のすり減った下駄突っかけて行くに等しい。
前後に子どもを乗っけて走る馬鹿ママにも困ったモンだ。
いろいろ切羽詰った事情があるにせよ、
わが子の危険を省みないのでは親として失格、
母親の資格を剥奪されても文句は言えまい。

とにかく先進国で自転車が歩道を走ってるのは日本くらいのもの。
いや、自転車が歩道を走ってるんじゃ後進国もいいところで
早急にG7から脱退すべきであろう。
お役所のやることは一事が万事・・・なのである、ったくもう。

歩道でも車道でも走行可能な自転車が
よしゃあいいのにわざわざ歩道を好んで選ぶのは
危険なクルマから身を守るためにほかならない。
愚劣なのは同時に歩行者を危険に晒している自覚がないこと。
自分さえ安全ならば、他人は死のうが怪我しようが
I really don’t fucking careの発想なのだ。
これを人非人の所業と言わずして何と言う。

あれは1年半ほど前だった。
文京区・根津の交差点でヨレヨレのご隠居とすれ違った。
頭に巻いた、あれ何ていうのかな、バンダナみたいなヤツ。
ハッと思って数歩戻り、横顔を確認すると家元じゃないですか。
医者にでも行く様子だったが、それこそ今にもぶっ倒れそう。
失礼ながら“余命いくばくもございませぬな”であった。
それがずいぶん元気になって高座にも復活したというから
まさに奇跡の生還、喜ばしい限りである。

やれやれ、今回もまたちっとも
「食べる歓び」しなかったので最後に一品。

「八重垣煎餅」は根津で焼いて90年
photo by J.C.Okazawa


海苔を巻いた根津焼とバジル風味の下町の華
photo by J.C.Okazawa

どちらもしょっぱ目だからビールのアテにしているが
なぜここで唐突に煎餅が出てきたのかというと、
実は「八重垣煎餅」が家元の棲むマンションの1階にあるからだ。
ある日、店内で品定めをしていたら
女将がスッと小さな紙コップで緑茶を出してくれた。
これじゃ買わずに帰れやしません。
そのときは不在だったけれど、くだんの家元、
店で油を売ってる姿がしばしば目撃されている。
今度あったら自転車談志、もとい、談義をしてみたい。


【本日の店舗紹介】
「八重垣煎餅」
 東京都文京区根津1-23-9
 03-3828-7228

 
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2010年10月21日(木)

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