「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第1122回
ガレージで一騒動(その1)

いや、はや、ガレージで一騒動があった。
車庫でクルマぶっつけたのか? ってか?
いえ、いえ、トンデモない、クルマ持ってませんもの。
他人(ひと)んちの車庫で立ちションしてとっ捕まったのか?
いえ、いえ、そんなこたァしたことない。
じゃあ、ゲロでも吐きやがったのか?
んっもう、どうしてハナシをそっちに持ってくかなァ。

シャコはシャコでも車庫じゃなくて蝦蛄のほう。
鮨屋のキザな客が気取って蝦蛄のことをガレージと呼ぶのは
昭和30年頃に流行った下手なシャレ。
確か、小津安二郎の映画で笠智衆も使っていた。
素人衆がこれ“聞けよがし”に鮨屋で符丁を発するのは
ほめられたことではない。
むしろ傍で聞くものにとっては笑止千万。
まっ、シャリ・ガリ・アガリの無作法な類とは異なるし、
他愛のない駄ジャレにつき、罪がないから使わせてもらった。

ことの起こりは昨日に引き続き、くだんの週刊現代である。
お取り寄せで楽しむ「おいしい秋」を見つけたという特集。
雄武産秋鮭のスモークサーモンとその筋子のスモーク、
長岡産の八石なす、豊中の松茸とろ鯖寿司、
とにかく旨そうなものがズラリ紹介されている。

中にひときわ目を惹く“ブツ”が1品、光り輝いていた。
うなぎで有名な、というか産地偽装うなぎで
全国にその名を知られた愛知県・一色町。
彼の地でうなぎの代わりに海老を扱う「毎味水産」が
送ってくれるボイルシャコこそ、光り輝く“ブツ”。
蝦蛄好きのJ.C.が放っておく道理はない。
何せ、江戸前蝦蛄を求めて神奈川は小柴の港に参上したほどだ。
価格をみれば、600g×2パック1200円(送料別)とある。
いいじゃないの、安いじゃないの、さっそく取り寄せた。

「ピンポ〜ン!」
指定の日曜日午前中、“ブツ”は届いた。
千円札2枚と小銭と赤のボールペンを握っていそいそと玄関へ。
すると、宅配便のアンちゃん曰く、
「ええっと、2940円になりま〜す!」
ゲゲッ、ちょいと高いんじゃないの?
ここまで驚かなくともよいが、その言葉は飲み込んで
「品物と送料の明細書ありますか?」
「全部一緒になってて、ちょっと判らないんですけど・・・」
「ありゃりゃ、そりゃしょうがないなァ」
「すいません、領収証はご必要ですよね?」
「いや、領収証は要りません」
「ありがとうございます、助かります」
アンちゃん、ニッコリ笑って立ち去る。

ふ〜ん、何か不明朗な会計だなァ。
発泡スチロールのケースを開き、内容を確かめて一息。
すると、あらためて頭の隅から疑問が湧いてきた。
1.2kgの蝦蛄が税込み1260円、その送料が1680円か・・・。
一色町に住む人々が「毎見水産」に出向いて購入すれば、
1260円で済み、1g=1円の相場がほぼ成り立つワケだ。

販売元に直接問い合わせてみようか。
何だかそれも面倒くさい。
単純な計算ミスってこともあるし、まっ、いいか。
そう思い、忘却の彼方に押しやった疑問点。
ところが人間の心理ってのは妙なものですな。
このコラムを書きながら、やっぱりウヤムヤはよくないぞ。
中途半端に読まされた読者に「ツッコミが甘いヨ」なんて
揶揄されるのもはなはだ不本意だ。
何よりも自分の好奇心が真相を究明しろと言い始めている。
てなワケでいったん筆を止め、
受注元の東京営業所の番号をダイアル。
「毎味水産でございます」
「ああ、もしもし」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
この間およそ5分。
実はたった今、受話器を置いたところであります。

           =つづく=

 
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2010年10月22日(金)

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