「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第1126回
マイ・ホームタウン・アゲイン(その1)

慶事に列席するため、月初に長野県入り。
ことのついでに生まれふるさとの長野市にも脚を延ばした。
この7月、約二十年ぶりに訪れたというのに
こういうものはハズミがついて重なるのだろうか。

駅前から善光寺に続く坂道のそば屋にて昼食。
参拝客であふれる参道にもそば屋が軒を連ねているが
そのずっと手前にポツンとあった1軒だ。
「吉祥庵」という屋号が信州そばとミスマッチの感否めず。
ところが店頭の謳い文句に興味をそそられた。
茹で上げて冷水にさらしたそばを一山ずつ、
いくつかの小盛りに分けて供するという。
新潟のへぎそばにも見られるスタイルはボッチ盛りと称する。
そして入店を決定付けたのが1枚10円のかき揚げだ。
さすがに出血サービスらしく、“お一人様1枚”の但し書き。
試してみたくて即座に暖簾をくぐった。

注文品は格安かき揚げとミニおやき、
そしてざるの上のそばに海苔のかかっていないざるそば。
そもそも海苔のアル・ナシで
もりそばとざるそばを仕分けるのはどうかと思う。
せいろで出そうがざるだろうが、海苔ナシはもりそば、
海苔アリは海苔そばのほうが通りがいい。
でもモリソバとノリソバでは聞き取りが厄介なのだ。
誤発注が多発してそば屋がてんてこ舞いしてしまう。

オーダーを通してすぐにそば茶とそば団子が運ばれた。
どこまでもサービス精神の旺盛な店である。
ミニおやきはホントに小さいのが3カン付けで
中の具材はそれぞれに茄子・かぼちゃ・野沢菜。
生地にはそば粉が使用されて香ばしいものの、
おやきにはメリケン粉のほうがシックリくる。

ボッチ盛りのそばは井戸水に晒しでもしたかのように冷え冷え。
それはありがたいのだが、問題はそばが抱えた水気である。
水切りが不十分なうえ、ざるの目が細かくて水はけも悪い。
箸でつまむと水が滴り落ちるのである。
まあ、そば自体はなかなかのもので
桜海老ど玉ねぎが入って10円のかき揚げが破格でもあり、
総合的に及第点の付けられる「吉祥庵」ではあった。

善光寺に詣でてからまたまた行っちゃいました、わが生家跡。
今回は家の前の小さな坂を上り、
ご幼少のみぎりに通った県立西高付属の幼稚園にも立ち寄った。
幼稚園自体は何年か前に閉園していたが
白ペンキ塗りの木造園舎には確かに見覚えがあった。
平屋の園舎の裏手にはりんご畑が拡がっている。
畑のほうはまったく記憶にない。

その夜の身の置きどころを物色しつつ、市内を散策、
むしろそのサマは徘徊に近い。
読者はすでにご存知だろうが
旅に出たときに必ず取る行動で、このひとときが一番楽しい。
そうしてマークした数軒の候補店から2軒に絞り込んでおく。
あとはホテルにインして一休みだ。

つい、うたた寝のベッドから這い出し、
シャワーを浴びて身も心もスッキリのクッキリ。
最初に赴いたのは善光寺そばの「司食堂」である。
この店の自慢は鯉こくと支那そばだ。
あまり好きではない鯉こくで飲む気になったのには
それなりの理由があった。

            =つづく=


【本日の店舗紹介】
「吉祥庵」
 長野県長野市大字長野東後町21
 026-231-5177


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2010年10月28日(木)

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