「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第1131回
ザ・ウーマン・フロム・ニューヨーク(その2)

ニューヨークから一時帰国中の旧友・K美子と八丁堀で再会。
前もってこの夜の1軒目は決めてあった。
隣り町の茅場町にある鳥料理の老舗「鳥徳」である。
ここ十年というもの都内各地に稀少な部位を含め、
良質の焼き鳥を供する新店が続々と生まれている。
一昔前には食べられなかったおいしい焼き鳥である。
だがネ、明治生まれの「鳥徳」のように
古く良かしき空気の立ち込める料理屋は
そんじょそこいらにゃございやせんぜ。

2階の畳に落ち着き、鳥鍋を突ついてもよかったが
J.C.はもともとカウンター好き。
しかもこの店はオープンキッチンの草分けとも言え、
料理人・K美子にとっても参考になるから好都合だ。
最初の乾杯はキリンラガーの生中。
さっき飲んだアサヒの生中とは味わいがまったく異なる。
同じ生ビールがこうまで違うものかね。

名代の焼き鳥は、ヒナ(正肉)・もつミックス・背肝。
もつミックスはアイデアの勝利だろう。
珍しい背肝は大好物だ。
これまた好きなクダも注文したが
出さなくなってずいぶんになるらしい。

ニューヨークではまず食べられない鶏もつに
遠来の客も大喜びである。
そうだ、真っ先に頼むべきもつ煮を忘れていた。
乾杯が済むと同時に堰(せき)を切ったように話が弾み、
肝心の料理注文がおろそかになることはままある。
酒を黒糖焼酎のれんとに切り替えた頃、到着したもつ煮。
これを見て合点がいった。
焼き鳥からは姿を消したクダがごっそり混入している。
なるほどこれなら文句はない。

ひとしきり飲み食いして
何だかワインが飲みたいな、ということになった。
ニューヨーク時代はビールのあとは必ず赤ワイン、
深い時間はコニャックの水割りがほぼ毎晩のお定まり。
それならついさっきあきらめた「maru」が
彼女のホテルに近いこともあって便利だ。
再びもと来た道を引き返す2人。

「maru」は宮田酒店直営のバーで
2階と3階はそれぞれカフェとレストラン。
コンビニやスーパーに押されてどんどん古い酒店が
消えてゆく中、経営手腕を発揮して成功を収めている。
バーの脇の酒販コーナーで買ったワインは
プラス500円で持ち込めるシステム。
これが成功の源でもあろう。

選んだのはバルバレスコ・プロデュットーリ‘05年。
気に入りワインの店頭価格は3800円だった。
このワインを彼の地で何本飲んだことだろう。
つまみはサバのリエットのクロスティーニと
小海老ソテーのハバネロ風味。
サバがまずまずで小海老はハズレ。
お互いに酒は弱いほうではないから
アッという間にボトルが1本空いた。

さて、まだ飲み足りないぞ。
どうせなら行きつけの店に引っ張って行こうと思い、
クルマを拾って神保町の「やまじょう」へ一路。
ここでまたビールと壱岐の麦焼酎・村主をやってしまい、
相方を帰りのクルマに乗せた覚えはあるが
それ以降、真夜中の記憶は曖昧模糊となりにけり。


【本日の店舗紹介】
「鳥徳」
 東京都中央区日本橋茅場町2-5-6
 03-3661-0962


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2010年11月4日(木)

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