「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第1139回
浅草に銭形平次がいるわきゃない!

世の中にお騒がせマンは多けれど、
的外れな論評で善良な市民に迷惑を掛けっ放しの筆頭格は
薄髪(はくはつ)の咬みつき亀こと、友里征耶であろう。
いつぞやは鮨っ食いのブロガーこと、
ずこ氏と鮨論争を繰り広げていたが
ニュートラルな立場から見ても
友里のトンチンカンぶりが際立っていた。

その最たるものが浅草の「鎌寿司」である。
友里は「鎌寿司」の親方のにぎりの供し方が
気に入らないらしく、にぎりを銭形平次の如くに
客に投げつけると言い放った。
どこの世界ににぎり鮨を投げる鮨職人がいよう。
むしろ投げても崩れぬ強固な鮨なら
ぜひ味わってみたいものだ。
まさにギネスブックものの鮨と言わねばならない。

そもそも書く文章に奥行きがないから
タイトルで読者の関心を惹かないと読んでもらえない。
最近でこそ多少はまともになったものの、
初期の「シェフ、板長を斬る悪口雑言集」なんぞ、
稚拙な筆は読むに耐えなかった。
この駄文については多くの方のご指摘があったから
今さら傷口に塩・胡椒を振ることは控えておく。

そんなわけで常識人には
理解の及ばぬキャッチコピーを乱発してくる。
銭形平次がその典型例で「鎌寿司」の親方もいい迷惑だ。
江戸前鮨の何たるかを知りもしない輩に
とやかく言われて困ったものだと嘆いておられた。
ことほど左様に友里VSずこの鮨論争はずこ氏に軍配。

「鎌寿司」に初めて“亀”を連れて行ったのはJ.C.で
親方にはとんだ災難を振りまいたことになる。
以前はちょくちょくおジャマしたのに敷居が高くなってしまい、
しばらくご無沙汰したが、先週久々に見慣れた暖簾をくぐった。

人懐っこい笑顔もそのままに相変わらずの栃木弁が耳に快い。
江戸っ子の女将さんも元気いっぱいで
まったく衰えを見せていない。
栄養状態のよい倅(せがれ)が裏方に徹して
親父を支えるようになった。
ふた親にとっては何よりの成長であろう。

浅草はアサヒビールのお膝元にもかかわらず、
この店の銘柄はキリンのクラシックラガー。
サッポロ生を扱う「正直ビヤホール」と並び、反体制派を貫く。
さっそくのつまみは、ばちまぐろの背とろ。
爽やかな脂のノリが口中に幸せを呼び込む。
煮はまぐり、真子がれい肝合え、新いくら、平目刺し、
〆小肌、〆さば、ばち中落ち鉄火巻きと、旨いモノづくし。
都内屈指のかんぴょう煮、
普段的惣菜のほうれん草胡麻和えもピシッと脇を固める。

最近親方が凝っている自家製干物の小あじと真子もオツだ。
殊に真子は、常連に河豚だと欺いても信じてしまうほど。
白いか・ばふん海胆・小柱を合わせた小鉢が出て
沢の鶴の上燗に切り替えた。
たら子と数の子をちょこっとつまみ、お銚子をお替わり。

締めのにぎりは、赤貝とそのヒモ、半生のゆで車海老、
ヒモ付き青柳(バカ貝)、そして酢めし抜きの玉子である。
満腹&満足につき、小肌も穴子もにぎらせず、
今宵は打ち止めとして箸をおく。

そう、そう、書き忘れるところだった。
鮨を放り投げるなんてとんでもない。
細身のにぎりは内村航平の如く、軽やかな着地を見せた。
そのときかすかにトンと、
音を立てたような、立てなかったような・・・。


【本日の店舗紹介】
「鎌寿司」
 東京都台東区西浅草2-11-1
 03-3844-6915


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2010年11月16日(火)

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