「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第1146回
重箱に吹くすきま風

秋風が吹く前の日曜日。
上野広小路から湯島の天神下に向けて歩いていた。
時間はまだ午前中。
あと半刻もすれば、ぼつぼつ飲食店が営業を始めよう。
天神さまの細道ならぬ、坂道を上って
湯島の白梅を愛でるにも季節がまったくお呼びでない。
それでは旧岩崎邸におジャマするとしようか・・・。
でもネ、旧ナントカ邸ってあんまり好きじゃないなァ。
その昔、棲んでたアルジにしたって
自分の根城を他人に土足で歩き回ってほしくはなかろう。

そんなことを思いながら天神下交差点を右折した。
前方は不忍池の緑である。
池のほとりのベンチにこぢんまりとした人だかり。
将棋をさすヒマな2人のオジさんと
それを取り囲むもっとヒマなオジさんたちだ。
全国のみなさん、東京はいたって平和ですよ〜ォ!

ボート池には十数隻の船影が揺れている。
かもめが数羽、舳先をかすめて羽ばたいている。
青い空には白い雲が3つ、4つ、ぽっかり。
ここで松坂屋あたりがアドバルーンの1つも上げりゃあ、
文句のつけようのない東京の休日ってことになる。

胃袋が空腹を訴え、頭脳が思考を開始した。
思いついたのは池之端のうなぎ屋「柏家」。
不忍通りの裏筋に湯島と根津を結ぶ道が1本あり、
数軒の飲食店がほそぼそと(?)商いを続けている。
西荻にも支店だか、暖簾分けだかのある「柏家」。
批評・風評は耳にしてないけれど、古い土地柄にあって
長きに渡り存続するからにはそれなりの理があろう。

店内はなかなかの活況を見せていた。
2階の座敷からドヤドヤと男たちが降りて来た。
その数、十数人は何かの寄り合いみたいだが
まだ正午過ぎだぜ、いったいいつから上がっていたんだ?

隣りの卓では初老の夫婦が天重を食べている。
ランチのみの提供で950円と品書きにある。
うな重は(特)から(梅)まで4段階あり、
2600円から1800円。
いつでもどこでも最安・最小、この日も当然(梅)でゆく。
ほかに気になったものは以下の3品。
 一、 きも焼き 450円
 一、 おでん(十月〜三月)400円
 一、 蟹の味噌汁(十月〜三月)400円

あれば必ず注文する肝焼きだが、8割がた売切を告げられる。
この日のこの店も案の定。
「そんなんなら品書きからはずせよ!」と毎度、言いたくなる。
ほかの2つはべつに食べたかったわけではない。
(1) おでんまで出すうなぎ屋のうなぎははたして旨いか?
(2) 蟹料理がないのに味噌汁だけあるのは不気味だぞ!
このことであった。

とまれ、やってまいりました(梅)子さん。
フタを開けると、ありゃりゃのりゃ、
小さいうなぎは先刻承知だが重箱がデカすぎるよ。

すきまから白いごはんがコンニチハ
photo by J.C.Okazawa

重箱にすきま風が吹いていたのでした。
いただいてみて再びガックシ。
滋味の欠落したパサパサのうなぎに
ヤワヤワで締まりのないごはんだもの。
ちゃんと肝の入った吸い物はエラいけれど
玉緒さんルンルンの♪マロニーちゃん♪は余計でしょうに。


【本日の店舗紹介】
「柏家」
 東京都台東区池之端2-3-11
 03-3821-3812


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2010年11月25日(木)

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