第1151回
星のおそば屋様(その2)
ミシュラン星付きのそば店、いわゆる“星のおそば屋様”を
サン=テグジュベリの「夜間飛行」さながらに飛び回っている。
今日はその2回目、何軒かまとめたので先を急ぐ。
ここ数年来、ブームが到来している神楽坂に
行き交う人の絶えることはない。
目立つのは中高年のオバさまグループだ。
歩道を歩くときは横2列がマックスなのに
3〜4列で闊歩するからジャマくさいことはなはだしい。
関西のオバはんに倣ったものか、
関東のオバやんまで図々しさをいかんなく発揮している。
憂慮すべし。
人が集まるわりにおいしい店の少ない神楽坂、
これは新宿区全体の宿命かもしれない。
概して新宿・渋谷・池袋のダイニングシーンはみすぼらしい。
日本そばも例外ではなく、
神楽坂に名店・佳店はなかなか見つからない。
そんな中で「蕎楽亭」が人気をほぼ独占している。
揚げ立て天ぷらが名物だが、値段に反比例して魅力に乏しい。
そば同様、一定のレベルには達しているものの、
期待が大きければ大きいほど、失う望みも大きくなる。
そば難民と堕している地元民御用達というだけで
遠方から訪れる価値はついぞ見出せなかった。
神楽坂の次はシロガネーゼで有名な白金へ飛ぶ。
屋号の「三合菴」は珍しい“菴”の字に一工夫あるが
リノヴェートなった店内がヤケに狭っ苦しい。
近隣の常連に加えて評判を聞きつけた一見も襲来するから
狭苦しさは息苦しさにまで昇華する。
“そばはゆるりと食うべかりけり”
とてもじゃないが、そんな悠長なことは言っていられない。
天せいろ(1950円)を構成する天ぷら&そばよりも
つゆ&薬味のコンビネーションに惹き込まれた。
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そばつゆ・天つゆとそれぞれの薬味
photo by J.C.Okazawa
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凛とした佇まいが素敵だ。
高額店にはそれなりの付加価値が求められ、
その点、この店は条件をクリアしている。
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海老3本に椎茸・隠元・南瓜の天ぷら
photo by J.C.Okazawa
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星付きそばには甘皮の星が散っていた
photo by J.C.Okazawa
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そば自体は「ほそ川」、「蕎楽亭」より好きなタイプ。
しかしてこのそばはかけにおいてこそ、その魅力を発揮する。
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青柚子と切り三つ葉の香るかけそば
photo by J.C.Okazawa
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これからの時期は別盛り天ぷらそばの天ぷらで銚子を1本、
かけを時間差でお願いし、一緒に銚子をもう1本。
こたえられませんなァ、実に!
白金をあとにして六本木ヒルズ「竹やぶ」。
恵比寿時代と趣きが異なるが
やはり一風変わった雰囲気が漂っている。
ここには食わにゃあ帰れぬ、必食の逸品がある。
それはそばではなく、そばがき。
そば切りの原型のそばがきのほうが旨けりゃ、
そば切りが生まれて世間に広まる道理はなく、
“がき”は“切り”によって駆逐されたのが現状。
通常はツレが欲しがりでもしなけりゃ、
見過ごすそばがきなれど「竹やぶ」だけは例外中の例外、
独りのときでも喜々として頼んでいる。
箸先を口元に運びながら思う。
たまにはうどんの代わりにすいとんもアリかな?
そばがきをつまむたび、
条件反射ですいとんを連想するJ.C.である。
=つづく=
【本日の店舗紹介】その1
「蕎楽亭」
東京都新宿区神楽坂3-6
03-3269-3233
【本日の店舗紹介】その2
「三合菴」
東京都港区白金5-10-10
03-3444-3570
【本日の店舗紹介】その3
「竹やぶ 六本木ヒルズ店」
東京都港区六本木6-12-2 六本木ヒルズ
六本木けやき坂通りレジデンス B3F
03-5786-7500 |