第1158回
独り飯で ささやかなゼイタク
ごくフツーの日本人男性に好きな食べものを訊ねたら
おおかた鮨・刺身・焼肉・ステーキという応えが
返ってくるに違いない。
これが女性だと、ピッツァやパスタ、
あるいはフルーツ・洋菓子の出番があるかもしれない。
男にはうなぎ・天ぷらも人気だろうが
そこまでメジャーではあるまい。
ラーメン・カレーになると、普段から食べ過ぎており、
しかも安価に過ぎて、好物とするのははばかられる。
チープな食べものが好みと知れたら
本人までチープな人間と思われかねない、
そこを危惧して多少の脚色が施されるワケだ。
去年あたりから自炊を意識的に増やしている。
とは言っても、平均的日本人に比べれば、
外食率はすさまじく高い。
エンゲル係数は長いこと高止まりである。
それにしても内メシは安上がりですな、
居酒屋予算で刺身とステーキが両方食べられちゃう。
もしもずっと内メシ派であったなら
今頃、家の1軒や2軒は建っていたことだろう。
そんなことで、とある夜。
独りわが家にて、ささやかなゼイタクを試みた。
キッカケはただ今建替え中の歌舞伎座そばにある、
「いわて銀河プラザ」を訪れたところにあった。
そこで見つけたのがこの牛肉。
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短角和牛のロース肉
photo by J.C.Okazawa
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個体識別番号もバッチリと
photo by J.C.Okazawa
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他人様ほど牛肉を愛さないJ.C.が
岩手特産の短角牛は好んで食べる。
脂肪の少ない赤身が好きなのだ。
帰宅後、腕をふるった当夜の献立は以下の通り。
酢がき いなだヅケ 板わさ セロリスティック
短角牛ロースのガーリックステーキ
付合わせ(絹さやソテー・クレソン)
三杯酢に浅く漬け込んだ酢がきが絶品。
和食店によくある殻付き生がきに
紅葉おろし&ポン酢という食べ方とは
おいしさの次元がまったく違う。
この夜もいつも通りに加熱加工用の生がきを生で食べた。
こちらのほうが生食用より味が濃いのだ。
ところが何たることか、肝心の短角牛がイマイチでガックシ。
個体差のせいなのか、持ち前のコク味がトンと感じられない。
けっして不味くはないが期待が大きかったぶん、反動も大きい。
後日、今度は日本橋の「三越本店」地下である。
鮮魚売り場で見つけたのがこれ。
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鹿児島産養殖本まぐろの背とろ
photo by J.C.Okazawa
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中とろ・大とろよりも赤身が好みながら
キメこまやかな背とろは大好物。
西浅草は「鎌寿司」の定番、
ばちまぐろの背とろを瞬時に連想した。
養殖モノとはいえ、比較的お求めやすい値段にも好感。 その夜の独り飯はかくの如し。
もろきゅう 冷やしトマト はんぺんバタ焼き
本まぐろ背とろ刺身 子持ちなめたがれい煮付け
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ヌメヌメと照り輝く背とろ
photo by J.C.Okazawa
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生わさびを多めに添えて口元に運ぶと
適度な脂のノリにシルキーな舌ざわり。
期待にたがわぬ美味に舌鼓がポンポンのポンである。
「三越」で同時に買った、なめたがれいも文句なし。
ほどよく冷やしたシャブリの1級畑が
軽く1本空いちゃいましたとサ。 |