「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第1165回
空飛ぶニワトリ(その1)

ある金曜日の夜。
翌土曜日は国立へ出掛けようと心に決めた。
東京人なら地名としての国立をご存知だろうが
そうでない方には少々説明を要するだろう。
国立といってもこれは国立競技場や
国立科学博物館へ行くのではありません。
そもそも“こくりつ”ではなく、“くにたち”と読み、
東京23区の西側、以前は東京都下と呼ばれた地域の一部、
国立市のことなんですね。

何でこんなにまぎらわしい市名になったかというと、
何のことはない、ここが国分寺と立川の中間だから。
大森と蒲田があるので大田区ってなもんや、三度笠である。
お役所のやることはいつもこの程度だが察するに
国立市民はこの名前をけっこう気に入っているフシあり。
この場合、瓢箪から駒と言えなくもない。

作家・山口瞳、詩人・草野心平が棲み暮らし、
酒を酌み交わし、愛してやまなかった国立。
もっとも草野心平は2年半後、
さらに都心から離れた東村山市に移転しているから
それほどの思い込みはなかったのかも・・・。
今は亡き文人たちより、山口百恵ファミリーが
暮らす街といったほうが通りはいいかな?

とにかくJ.C.にはきわめて縁薄き土地柄。
せっかくの“遠路はるばる”につき、
どこか行き掛けの駄賃はなかろうかと思案の末、
川崎市・登戸に目をつけた。
目指すは「ブルーパブ ムーンライト」だ。
ここは街の小さなビール醸造所にしてビヤパブ。
ご覧のように地ビールの品揃えは豊富。
充実のフードメニューは鍋だけで4種類もあった。

ペットボトルでテイクアウトとは珍しや
photo by J.C.Okazawa

多摩の泉と多摩の流れを飲んでみたが
色の濃い“流れ”のほうに厚みがあるものの、
さほどの違いは感じ取れなかった。
昼下がりにサクッと飲むに地ビールはちと重い憾みがある。

見知らぬ街の散策を終え、乗り込んだのはJR南武線。
谷保駅下車で大学通りを北上し、国立に入る算段は
何となく裏口入学の趣きがある。
谷保は山口瞳作「居酒屋兆治」のモデルになった、
「文蔵」がかつてあった場所である。
高倉健と大原麗子で映画化もされている。
今思えば大原演ずる薄幸の女性は
のちの彼女の死に様を如実に暗示するものがあった。

今宵、目当ての店は谷保にはなく、国立駅のそばにある。
開店までかなり余裕があり、
時間つぶしといっては祟りが怖いけれど、
有名な谷保天満宮に立ち寄ることにした。
天満宮となればご多分にもれず、ご祭神は菅原道真公である。

鳥居をくぐり参道を真っ直ぐ、短い石段を下ろうとすると、
その石段が鳥の糞で白く薄汚れている。
「やべエ!」――あわてて頭上を振り仰いだJ.C.、
あまりのことに階段を転げ落ちそうになった。
何と、何と、もひとつオマケに何と
(最近はこればっかりやナ)、
うっそうと茂る木々の枝にけっこうデカい数羽の鳥が
肩寄せ合って止まっているではないのっ!
ハゲタカだろうか? 糞の元は疑いなくコイツらである。
いったい何なんだ、この鳥たちは?
糞害にあったらそれこそ憤慨しちゃうので
ヤツらの直下から身体をずらし、あらためてしげしげと観察。
ほどなく正体を突き止めたJ.C.、
またまたブッタマゲてのけぞったのであった。

  =つづく=


【本日の店舗紹介】
「ブルーパブ ムーンライト」
 神奈川県川崎市多摩区登戸1818
 044-930-1018


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2010年12月22日(水)

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