第1188回
花街にこんな店があったとは! =にせどろシリーズ(1)=
千円札1枚でべろべろに酔える店を"せんべろ酒場"と呼ぶ。
この言葉は社会にだいぶ認知されてきた。
でも、その手の店を探すのは容易ではない。
そこでJ.C.、なけなしの知恵をしぼって考えた。
キャップを一段上げて2千円とすれば
選択肢はずいぶん拡がるのではなかろうか。
千円でべろべろが"せんべろ"なら
2千円で泥酔できるのが"にせどろ"である。
今月から月一ペースで"にせどろシリーズ"をお送りしたい。
今日は記念すべき第1回。
ただいま、日々成長中のスカイツリーからほど近く、
かろうじて花街らしき体裁を保ち続ける向島。
そぞろ歩けば、見番もちゃあんと残っているし、
三味の爪弾きが頭の上から注いできたり、
小粋な芸妓とすれ違う幸運に恵まれることもある。
さびれはてたとはいえ、向島は柳橋はもとより、
新橋・赤坂・神楽坂と比べれば、
まだまだ往時との落差が小さいほうではなかろうか。
この街には料亭以外にも鮨屋や天ぷら屋、
あるいはうなぎ屋や洋食屋が点在している。
ただし、庶民の味方の居酒屋・大衆酒場の類いは
ほとんど見当たらないのが現状。
そんな状況下で「かどや」を発見したときの歓びは大きかった。
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小ざっぱりした玄関先に大衆酒場の暖簾
photo by J.C.Okazawa
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初訪問時は宵の口だったせいか、ほかに客は1組。
はたしてここが地元の人気店なのかどうか、判断しかねた。
それでも良心的な値付けの料理、豊富な酒類の取り揃えから
客がつかない道理はない、という印象を受けた。
生ビール中ジョッキ400円、ビール中瓶450円、
焼酎ハイボール・レモンサワー・日本酒(1合)各250円、
こいつはかなり安いや。
安いのはつまみも同じ、オススメはかくの如し。
ナスの揚げだし・ニラ玉炒め・山芋磯辺揚げ・・250円
牛もつ煮込み・ホルモン炒め・まぐろの山かけ・・300円
カモのたたき・剣先スルメ・ピザ・焼きそば・・350円
刺身類は数種揃い、食事モノにいたっては
ラーメン・そば・茶漬け・おにぎり・雑炊に
長崎の皿うどんまで出している。
この調子だと、上手く仕上げりゃ"せんべろ"でイケてしまう。
本日の料理から好物のたら子煮を選んだ。
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メニューには、たら子花煮とあった
photo by J.C.Okazawa
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花煮というのは皮膜に包まれていたたら子が
炊かれてフワリと花開くからである。
たら子といっても真鱈の子ではなく、助宗鱈の子。
したがって助子の別名を持つ。
白子は真鱈が上だが、真子は助宗に軍配が挙がる。
お次はイワシフライ。
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辛子で半身、ウスターで半身を食べる
photo by J.C.Okazawa
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銀座の名店「いわしや」には及ばぬものの、
サクッと軽快に揚がっており、
並みの定食屋よりずっとよい。
ユニークなのが飲みもののピッチャー対応。
すべて1200CCで生ビールが850円、
焼酎ハイ・レモンサワーは各500円、
ウイスキーハイ・カシスソーダが各1000円。
グループでなくとも呑ん兵衛ならば
ついピッチャーでお願いしたくなる。
このエリアにあって深夜2時すぎまでの営業も
ありがたいことこのうえなし。
【本日の店舗紹介】
「かどや」
東京都墨田区向島5-30-6
03-3626-9606
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