「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第1206回
フグより旨いハギがある

フグ好きにはたまらぬ季節が続いている。
年を越えてオスの白子も丸々と太り、
これに目のない人は散財を余儀なくされていよう。
幸いJ.C.はフグにそれほど魅力を感じないから
過度にフトコロを痛めることもなく、日々平安に過ごしている。

鍋にしたって河豚ちりより鱈ちりが好きだ。
ただし、タラも最近はずいぶんと値上がって
庶民性が薄れつつあるのは問題。
いつの頃からか、タラとサケは値段が逆転した。
昔から塩じゃけは庶民の味方であったけれど、
その頃、干だらはもっと安かった。
世界各地で養殖されているサケに比べて
タラの養殖は前代未聞だもの。

フグはてっちりより、てっさが好み。
もう数十年も前のことながら
人間国宝・柳家小さんが語っていた。
「フグの刺身は旨いが、鍋はアンコウがいい」――
その通りかもしれない。
第一、鍋に使われる部位のヴァリエーションが違う。
アンコウには棄てるところがほとんどないのだ。

となれば、フグは刺身に如くはナシか。
いや、実は刺身にも強力なライバルがいる。
すっとぼけた顔をしたあの皮ハギである。
いつぞや、真冬の愛媛・松山を訪ねたとき、
当地では皮ハギが絶大な人気を誇ることを知った。
割烹から居酒屋まで品書きに“ハギ”がない店はなかった。
初めは何のことやら検討もつかず、
皮ハギと気づくまでかなりの時間を要した。
新鮮な皮ハギを肝とともに味わい、
その美味に瞠目したものである。

昨年の暮れのこと。
旧知の友人・M松嬢に誘われて
一夜、銀座の「鮨 大河原」に集結した。
質より量の大食漢・友里征耶を含め、
総勢5人がつけ台に並ぶ。

「大河原」といえば、
同じ銀座の「椿」にいた二番手が独立開業した店。
噂は耳にしていたものの、今回が初見参である。
数年前のフード・ダイアリーをめくり、
事前に「椿」の評価をチェックしてみた。

「椿」を訪れたのは11月初旬。
こち・皮はぎ・かつおをつまみ、
春子・小肌・金目昆布〆・赤身ヅケ・焼き霜さば・穴子・
かつおw/にんにく・小肌w/おぼろ・玉子をにぎってもらった。
花丸が付いていたのは、つまみの皮はぎ&こち。
さて、今宵はどうなるのやら・・・。

おまかせは避けたいが大人数につき、わがままを控える。
オマケにビールまで苦手なエビスの生とあってガックシ。
これなら「銀座ライオン」か「ニュートーキョー」で
1杯引っ掛けてくればよかった。

いただきものはかくの如し。
 つまみ・・くえw/塩昆布・まぐろ中おちw/卵黄裏漉し・
      蒸しあわび・自家製からすみ・たら子わさび漬・
      葉わさびひたし・するめいかワタ漬・いぶりがっこ
 にぎり・・ぶりヅケ・海胆&いくら酢めし乗せ・皮はぎw/肝・
      平貝・大とろ・焼きさば・穴子
 お椀・・・生のり味噌椀

この夜のベストはからすみと皮はぎ。
生干しのからすみが滋味いっぱい。
皮はぎは修業先の「椿」同様、きわめて良質。
血筋というものは争えぬものなのだ。
友里が推奨するほどではないにせよ、
真っ当な銀座の鮨屋としての水準はクリアしている。
会計も1人2万円と少々、内容からけして高くはない。

お開きのあと、飲み足りなくて独り神保町「やまじょう」へ。
むかごと赤かぶ漬でスーパードライと生レモンサワーを飲む。
それにしても皮はぎを始め、的鯛・つぼ鯛・まながつお、
どうして縦に平ぺったいサカナは旨いんだろう?
皮はぎのとぼけた馬ヅラを思い浮かべつつ、
ぼんやりと考えたことでした。


【本日の店舗紹介】
「鮨 大河原」
 東京都中央区銀座6-4-8曽根ビル2F
 03-6228-5260


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2011年2月16日(水)

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