「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第1207回
「根の津」は根津の人気店

久しぶりに「根の津」を訪れた。
名の通りにここは文京区・根津の讃岐うどん専門店。
すぐそばに徳川家ゆかりの根津神社がある。
同じく根津のうどん店「釜竹」と人気を二分しており、
「釜竹」のほうは大阪発祥の釜揚げうどん専門店。
串揚げの老舗「はん亭」のほかに
これといった食事処に恵まれぬ町で
2軒のうどん屋が異彩を放っている。

「根の津」は小体な店舗で昼めしどきは行列必至、
多少の“待ち”は覚悟のうえの来訪である。
到着したのは土曜の正午ちょい前。
3卓ある4人掛けテーブルはすべて埋まっていたものの、
1つだけある6人掛けの大テーブルに人影はなかった。
店員さんに促されずとも
単身客は自主的にこの大卓に身を置く人が多い。
席に限りのある店において4人掛けに独りふんぞり返り、
悦に入る無粋者がようやくこの国からも一掃された感がある。
公衆マナーの面から大人の国に脱皮できたことが喜ばしい。

待たずに着席の思いがけぬ幸運に恵まれた。
それでも時計の針が正午を回ると、
アッという間に大卓の四隅を単身客が占め、
真ん中2席が空いてはいても一応、満席の様相となった。
その後、数分でその2席も埋まったけどネ。
問題は隣りに座った眼鏡のアンちゃんである。
もともとデカいところへもってきて着ぶくれも手伝い、
箸を上げ下げするJ.C.の右手にふれることはなはだしい。
「邪魔くさいやっちゃな」――心で叫ぶもお互いさまか。

この店には温冷二種うどんというのがある。
小ぶりなどんぶりが2つ、夫婦善哉のように運ばれる。
これが金850円也とお得感満載だ。
来る道すがら、これで行こうと心に決めていた。
そうと決まれば、温冷それぞれ3択から選ぶだけ。

 温――かやく・きつね・わかめ
 冷――ぶっかけ・生醤油・とろろ

チョイスしたのは温のかやくと冷の生醤油。
温はどれでも構わなかったが、冷は生醤油に固執した。
香川県を旅したとき、この食べ方にうなった。
冷水で締めたうどんにたっぷりの大根おろし、
そこに隣県・徳島特産の酢橘(すだち)を搾りかける。

熱いうちにかやくを食べ終え、生醤油に取りかかる。
序盤は快調にトバしたものの、どんぶり半ばを過ぎた頃、
ささやかな倦怠感にとらわれた。
何だか飽きてきちゃったのである。
思い出したのはニューヨーク時代の友人のひとこと。
「Spaghetti is verry boring food」――
「スパゲッティって退屈な食べものよネ」――
なのであった。
言われてみれば、ヤツらはスパゲッティより
ジッティ(ペンネやリガトーニなどマカロニ系の総称)を好む。
それも牛肉の赤ワイン煮なんぞ、肉と合わせてガッツリ食らう。
麺パスタをよく食べる友人を思い出してみると、
デカーロだの、デフィーノだの、イタリア系ばかりだ。
ちなみにボーリングとのたまわったパム嬢はユダヤ系であった。

噛んでる時間がうどんより短いせいか、
そばだとこうはならないのにね。
慢性金欠病の学生時代、
駅の立ち食いそば屋で食べるのは決まってうどん。
それがここ10数年は圧倒的にそばに代わった。
入れ歯でもないくせに
噛むのが面倒になるとは歳は取りたくないものである。
あ〜、ヤだ、ヤだ!


【本日の店舗紹介】
「根の津」
 東京都文京区根津1-23-16
 03-3822-9015


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2011年2月17日(木)

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