「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第1209回
おかず横丁の珍店

鳥越神社は台東区・鳥越にある。
毎年6月初旬にとり行われる例大祭の華、
千貫神輿は都内では最大にして最重のものらしい。
過去には怪我人どころか、死人まで出す事故が多々あった。
重いモノを持つのが大の苦手で
子ども神輿以外は担いだことがないが、
神輿というものは怖いものなんですねェ。

神社の裏筋を1ブロックほど西に進むと、
おかず横丁なるストリートが出現して
名前の通りに煮豆や佃煮など、
江戸の昔から庶民が愛したおかずを商う店が軒を連ねている。
バブルのはじけた頃からだろうか、
衰退の一途をたどり続けるさびれた商店街だが
最近は少しばかり活気が戻ってきたようだ。

何でもこの横丁にあって無農薬自然栽培の野菜を使い、
創作和食風の料理を供する「味農家」なる店が
予約もままならないほど人気なのだという。
どんな商店街でも目玉となる人気店は必要不可欠。
1軒の店が起爆剤となり、街全体を牽引することもあるからネ。
もっともこの店には入ったことがない。
ついこの間、店先に立って看板を眺め、
店名が「みのや」であることを初めて知った。
それまでは「あじのうか」だと、勝手に早合点していたのだ。
いや、お恥ずかしい限り。

その夜の行く先はおかず横丁の中ほどを
北に折れてすぐの「千味処」。
スーパー「ココス・ナカムラ」の手前に
和食店を思わせる屋号の「千味処」はある。
1週間前に散歩をしていて発見したこの店の料理は
インドと中国のフュージョンといった趣きで
実に興味をそそられるものがあった。
メニューにあったラムの串焼きにも大いに惹かれた。

入店してみると、お腹の大きくなった奥さんが接客担当。
調理はその旦那にしてお腹の子の父親であろう、
中国人の若い夫婦2人だけの切盛りである。
だが、なぜにラムの串焼きやカレーがメニューに並ぶのだ?
いきなりの質問は無粋につき、
頃合いを見計らったうえで小当たりに当たることにした。

ラムの串焼きとサモサをつまみに生ビールを2杯飲んだ。

東北地方風のラム串焼き
photo by J.C.Okazawa


じゃが芋&えんどう豆のサモサ
photo by J.C.Okazawa

こりゃどちらもビールにはピッタンコである。
東北地方は日本のそれではなく、中国のそれ。
判りやすくいえば旧満洲国一帯だ。
同じ中国でも羊肉から連想するのはウイグル地方だが
東北部や内蒙古でも盛んに食べられている。

キーマカレーとバターチキンを盛込んだプレートを
紹興酒の陳10年に切替えて食べながら
質問する機会をうかがう。

すべてが丁寧に造られて穴がない
photo by J.C.Okazawa

ほう、どうして中国人シェフが
こんなに本格的なインドカレーを造るかね?
不思議を超越して面妖ですらあった。

訊けば旦那は「ベンガル」の出身だという。
ベンガルといってもインドのベンガル地方ではなく、
秋葉原に開業して三十有余年になるインドカレー専門店のこと。
なるほどネ、これで合点がいきました。
陳腐な店名にレベルの高い料理のミスマッチがほほえましい。
やがて赤ん坊も生まれてくることだし、
応援してあげたい1軒である。


【本日の店舗紹介】
「千味処」
 東京都台東区鳥越1-19-2
 03-5829-9489


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2011年2月21日(月)

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