「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第1211回
洋食屋に一升瓶 =にせどろシリーズ(2)=

ハイ、今月も二千円で泥酔できる店のご紹介、
にせどろシリーズいきます。
安くて旨くて気軽に飲める店となると、
どうしても下町がクローズアップされるが
今回は珍しく山の手の三軒茶屋におジャマする。

かつて界隈は独身女性が好んで住みたがる一画だった。
かく言うJ.C.の学生時代のGFもここに住んでいた。
静岡県出身の彼女は2つ年上のR大生。
 ♪ だめよだめだめ つらいのと
    泣いてすがった 年上の女 ♪

当時、街にはロングヒットとなった、
森進一の「年上の女」が流れておりましたとサ。
もっともわれわれは
こんなドロドロとした男女関係とはまったくの無縁、
清く澄んではいなくとも
さほど汚(けが)れちゃいませんでした。
何せあちらは福永武彦、こちらはJ.P.サルトルなんぞを
それぞれに読みふけっていた青春真っ只中でしたもん。

さて、時は流れて今もなお、
三茶は相変わらず若い女性に人気のエリア。
キャロットタワーを右に見て世田谷通りを進む。
頭上を高速道路がはしる無粋な玉川通りと違い、
この通りは歩いていて楽しい。
やがて達する太子堂四丁目交差点を左折し、
2本目を今度は右折、およそ100メートル先の左手に洋食店「芝多」がある。

店内は薄暗い夜の喫茶店といった雰囲気。
なのにテーブルに一升瓶、それも焼酎の一升瓶を屹立させて
飲んだくれるサラリーマンのグループが居たりする。
そば居酒屋ならぬ、洋食居酒屋がここにあった。
世田谷区というと、都内有数の高級住宅地と思われがちだが
中にはこんな店、こんな客が居るんですなァ。

一升瓶はムリでも五合瓶(900ml)を注文してしまおう。
島美人と黒伊佐錦がともに1800円也だ。
2人連れなら酒はこれでもうじゅうぶん。
あとはつまみ。
 枝豆・イクラおろし各270円  湯豆腐370円 
 合鴨の燻製400円  手羽先唐揚げ530円  
 とんすき・豚煮カツ各600円 野菜スティック680円

どうして生野菜が煮カツより高いのか理解に苦しむが
洋食以外の品揃えがなかなかに豊富。
もちろん洋食メニューのハンバーグ・海老フライ・
かにコロッケ・ポークソテーあたりをつまみにする手もあり。

〆さば(350円)とリヨネーズポテト(530円)を取ってみた。

自家製かどうかの判別つかず
photo by J.C.Okazawa


シャッキリ感残るポテトとオニオン
photo by J.C.Okazawa

ビール・日本酒・焼酎・ウイスキー、酒を選ばぬのがよい。
ムニエルを食べたいと思って平目を所望すると、
たまたまこの夜だけなのか、不在であった。
そう、町の洋食屋にとって平目は高くなりすぎた。
その代用品が同じ白身のメルルーサだ。

鱈に似た食味のメルルーサのムニエル
photo by J.C.Okazawa

実際にメルルーサは冷凍食品でおなじみのホキであることが多い。
誰が名づけたか、ホキでは通りが悪すぎるわな。

ライスがおひつでたっぷり来るので
締めに何か1品、定食をお願いすると何人かで分けられる。
ただし、ライスは相当柔らかめだ。
厨房を見やれば2人の料理人はかなりのご年配。
合わせて160歳をクリアしよう。
接客のオバちゃんたちも3人合わせりゃ180歳は下るまい。
みなさん、老いてますます盛んながら
どうりでライスがヤワいわけだ。
しかし、ここには世の中が失いつつある温かみがまだ残っている。
今の若者にはこういう店でこそ飲んでほしい。
泥酔して迷惑をかけてもらっては困るが
故きを温ねて新しきを知る、人生に欠くべからざることである。


【本日の店舗紹介】
「芝多」
 東京都世田谷区三軒茶屋2-31-9
 03-3422-8785


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2011年2月23日(水)

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