第11回
組織ケーエイ学6: スペシャライズしよう。

事業のフォーカスを絞れ、とよくいわれる。
たしかにあらゆる分野で「総合」という業態が苦戦しており、
「専門」の元気さが目立つ。時代の流れはあきらかだ。
ただ専門というのは、単純に一つの能力を磨くことだと
考えてよいかどうか。

個人のレベルで考えてみる。
たとえば、ピアノを一心に練習してきた子が、音楽大学に行きたいといい、
また英語が好きだという子が外国語大学へ行きたい、
留学したいと言ってきた時、親としてどうアドバイスするか。
得意なことがあって、前向きにそれをやりたいという時に、
反対するのは難しい。
ただ、本当のことをいえば、ピアノが弾ける子も、英語ができる子も、
世の中にはすでに多すぎるのである。

コンサートピアニストになれるくらい、抜きんでていればよいのだろうが、
ほとんどの場合そこまでいかない。
英語が話せるといっても、その英語で何を話すのか、が本来大事なはずだ。

これが「ピアノが弾ける支店長」だったら魅力がある。
「英語ぺらぺらの技術屋さん」とか「技術オタクの法律家」とか、
能力がいくつかあれば、食いっぱぐれがなさそうな感じがする。

ぼくらの仕事でいうと、イラストレーターになりたいという人が
何人も訪ねてくる。
上手な人も結構いる。しかし使いたい人となると非常に少ない。
商業イラストの場合、絵が上手というだけではやっていけない。
イラストは「うまさ」よりも、個性が大切だ。
すると絵以外の部分で、得意な分野があるかどうか。
その人の魅力とか奥行きとか、なにか発展性が感じれられるかどうか。
ここが大事だ。

このことは、企業でも同じではないかと考えられる。
事業のフォーカスを絞るといっても、
ひとつの能力で勝負していては厳しい。
価格競争に巻き込まれたら、伸びしろを失ってしまう。
いくつかの能力をあわせることにより、
誰もがまねできない自分たちの得意分野をつくること。
わが社がめざす専門とは、そのような意味である。


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